著者の怪奇小説は、私の知っている限りでは、最近復刊された「怪奇小説という〜」以外は、すべて短編である。
「雪崩蓮太郎」もののようなシリーズものもあるが、多くは単発ものだ。
それは、怪奇小説に対する著者のポリシーであろう。
たしか著者はアンソロジー「異形の白昼」のなかで、怪奇小説は短編にかぎる、ということを述べていたと思う。
「異形〜」は、なかなかにレベルの高い怪奇小説アンソロジーであった。
さて、本書は著者の怪奇小説集成である。
本書一冊を読めば、著者の怪奇小説に対する考え方が良く分かる。
エッセイ「死体を無事に消すまで」の中でも言及されていたが、著者は不気味な存在が、具体的にその姿を見せるのが好きではない。
正体の分からない恐怖が、じわじわとせまってくる、というのに著者は魅力を感じていた。
だから、一時期流行した「13日の金曜日」シリーズのようなスラッシャーホラーは、著者は気に入らなかっただろう。
キューブリック「シャイニング」とか、キングなら他に「it」なんかは好きそうだが。
文章で読むのには、確かに著者の言うとおり、具体的な姿を見せない怪異のほうが、ずっと恐ろしい。
本書を読むと、著者が「四谷怪談」よりも、「生きている小平次」や「牡丹灯籠」の怪異を愛した理由が良く分かる。