マッカーシーの作品が最初に邦訳されたのは「すべての美しい馬」であり,会話文に「 」をつけない独特の文体に一発で魅了された。
そして本作品でも,その文体が生かされ,単なるクライムノベルに収まらない,ずしりと胸に残る重量感と余韻を味わうことができる。
マッカーシーのどの作品にも共通するテーマは「移動すること」なのではないかと思う。
そして,移動の過程で出会う曲がり角ごとに人は何かを選択し,前へと進んでいく。
この作品の後に書かれた傑作「ザ・ロード」や以前に書かれようやく邦訳された「ブラッドメリディアン」でも同様である。
さて,本作品はコーエン兄弟に映画化され,その出来はすばらしく,コーエン兄弟の最高傑作となったが,それはやはり,ほとんど原作をそのまま映像化したことから分かるとおり,原作の持つ力映像喚起力が強力で,映画的な脚本にあえてしなくても十分映画的であったためであろう。
マッカーシーの作品はこれからも読み続けていくだろう。