角川文庫から『蟹工船』が出たときき、興味は持っていましたが、既に、新潮社の『蟹工船』を読んでいたので、「今さら、まあいいや」と思っていました。しかし、先日、本書を手にとって見て、自分が浅はかであったことに気づきました。この角川文庫『蟹工船』には、本文に対する注釈があるため、非常に読みやすいです。例えば、本文に出てくる「白首(ごけ)」という言葉がどういう意味を持っているのか、後ろの注釈にとても分かりやすく書かれています。
また、小田切進氏の解説「小林多喜二―人と作品―」、手塚英孝氏の作品解説も、『蟹工船』と著者:小林多喜二を理解する上でとても参考になります。さらに、「新装版にあたって」ということで、最後に雨宮処凛さんが、現代の非正規雇用や貧困問題の視点から、『蟹工船』の意義を解説なさっています。
文庫本ながら、これだけのエッセンスが詰め込まれた本書は、まさに五つ星です。おまけに値段は362円と、新潮文庫よりも安くてお買い得です。
どちらの文庫を買おうかと迷っている方には、ぜひ、この角川文庫版『蟹工船』を進めます。また、私のように、「既に新潮社版を持っているからいいや」と思っておられる方にも、ぜひお勧めです。