作者名、作品名ともに知れ渡っている作品ですが、個人的に「プロレタリア文学」という背景もあってこれまで敬遠する向きがありました。が、実際に読んでみると、そうした感傷は別の思いに取って代わりました。
表題作二編に共通して描かれるのは、戦前の末端の労働者の姿です。当時は現在のように、労働組合のようなものが明示的に組織されていたわけではなく(勿論、そうでないものもあるが)、労働者達は企業側に不当ともいえる搾取をされる環境にありました。作中に登場する労働者達は独自に労働争議を起こします。その背景や生活が描かれていきます。
小説という枠組の中に入ってはいるものの、登場する人物に大きな生々しさ、リアリティを感じました。小説としてももちろん引き込まれるものが多々ありますし、それに加えて当時の労働への背景等が端的にでも窺われ、考えさせてくれる作品だと思います。作者の若くしての死が惜しまれます。