驚くような前世と今の深い因縁が、冴え冴えと降り注ぐ月の光りのもとで語られます。暗く深い深い闇が、煌々と照る満月に照らされたとき、信じられない光景が。
静かに淡々と語られる不思議な物語。
月夜の晩に、沢蟹の行列がどこまでもどこまでも続いています。不思議に思ってその後ろをついて歩くうち、とうきちは生まれる前にこんな風に大勢で歩いたことがあったと思い出すのです。
深い闇。流れる小川の水色と、辺り一帯を染める不思議な輝き。月の光りは冴え冴えと野山にふりそそぎ、この世と思えぬ世界がみるものを引き込んで釘付けにします。
「あなたがその恨みを手放さぬ限り・・・・・・」昔、とうきちが旅の六部に教えられたことでした。とうきちの前世は武将でした。名は七右衛門。蟹の行列の行く先は、村の名主の家。名主の息子の残虐な行為、それは、沢蟹を釣り上げては手足をむしり取るというむごい遊びでしたが、とうきちは我慢ならずに諭したのでした。
明らかにされる前世のこと。沢蟹は、名主は、とうきちは・・・・・・。
闇と光りの見事なコントラストがあの世ともこの世の物ともつかぬ世界を映し出す。切なく、そして優しく。