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11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
医学の闇,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 (単行本)
舞台は桜宮病院。バチスタ・スキャンダルが起きた東城大学病院と深いつながりがある。最先端医療は東城、終末期医療は桜宮。だが、ある時から東城が態度を変えたことから、今回の事件は起こる。ストーリー展開は、この著者には珍しくシリアスである。また、医者ならではの現在の医療の問題点を鋭く突いた箇所がいくつか見られる。それが海堂の持つ問題意識であり、心からの叫びなのであろう。私たちは、その言葉に耳を傾けねばならない。…と思ったら、途中から、白鳥の部下、姫宮が初登場する。白鳥自身も、なぜか皮膚科医役で出てくる。何のことはない、いつもの海堂ワールドの始まりだ。まあ、ファンとしてはそれを望んでいたのではあるが。 しかし、それでもこの作品はこれまでとは異なり、メッセージ性が強くなっている。読者は、この作品を通して、終末期医療のありかたについて考えざるをえないだろう。ただ生きることか、その質を重視するかがこの作品の中でも問われている。生の質を重視する考え方からすれば、この小説で行われる不正は決して間違ってはいないのだ。体中チューブだらけになって生き続けるか、人間らしい死を選ぶか。どちらを選ぶかは、患者とその家族にゆだねられるべきではないのか。 事件の真相が明らかになった後でも、桜宮病院のシステムが間違っているとはどうしても思えない。この本では、医療行政が終末期患者を切り捨てる方針をとったために、今回の事件が起こる。それだけに、なおさら桜宮病院の姿勢を非難することができないのである。 医学の抱える闇は、私たち素人が考えるより、はるかに広く、深い。
16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
『ジーン・ワルツ』の誕生と『螺鈿迷宮』の死,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 (単行本)
2007年11月30日リリース。海堂氏はいつも小説というメスで日本医療の患部はどこか、を白日の下に曝す。『ジーン・ワルツ』では産婦人科医がなぜ激減したかだけでなく、明治時代のまま変わらない法律の矛盾や、アンケートばかりとっている厚生労働省の逼迫した現実への無反応・無為無策さ、名ばかりの少子化対策といったあらゆるものの問題点を全て提示していた。『ジーン・ワルツ』が人間の『誕生』への問題提起であるとすると、本作は人間の『死』に対する問題提起として書かれている。そしてこの2つの小説は対となって構想されたのでは、と思える。デビュー作の『チーム・バチスタ・・・』で既に死者へのMRI検査の重要性を説いているが、本作では医者とは切っても切れない『死』の問題と、現代医療にとって『死』とはどのような存在なのか、を読むものに気がつかせる。 そして頭を過ぎるのがマイケル・ムーアの『シッコ』だ。アメリカ医療の酷さはどことなく今の日本の医療の先の姿のように思えてならなかった。 ここに登場する桜宮病院の院長の言葉、『医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた、クソッタレの学問だ。お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な』が、この作品を象徴している。厚生労働省の考える『死』、病院の受け止める『死』、自殺志願者の『死』、末期癌患者の『死』・・・どれも同じ『死』であるはずなのにこの作品では違って感じられる。それは各々の『生』が螺鈿のように様々に光り輝いているからなのかもしれない。圧倒的な読後感を残す傑作である。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
人が最後にできる教育,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 (単行本)
とても重苦しい気分になる本だった。よかれかしという心は、いつから道を過つのだろう。どこから道を外すのだろう。 人の心の中は、光だけでできているわけではない。光の部分と闇の部分を併せ持つことでバランスが作られる。 闇を切り捨てて無垢に光にのみ生きようとすることは、光をあきらめて純粋に闇にのみ生きようとすることと、同じぐらいに愚かなことだ。 これまで読んだ東城大病院シリーズとはまた違った、気骨のある医師が出てくる。 あの白鳥に役者が違うと言わしめる、桜宮巌雄病院長。 死が今よりも身近だった戦中・戦後からの日本の医療が抱えてきた闇の部分が、今回の主題になる。 作者は一作に一つずつ、医学の現状に苦言を呈しているが、今回は死体の上に成り立ってきた出自を捨てようとしている医学への警句が聞こえてくる。 死を看取る。その体験が近すぎて、何度も涙がこみあげてきた。 ことに、三色婆には、それぞれに泣かされた。たまらなかった。 死は、人が最後にできる、他の人への教育だ。 ひとは、いかに老い、いかに病を得て、いかに死ぬのか、身をもって示す。 それを通じて、いかに生きるか、学ばせてくれるのだ。 だから、私は死から目をそらさずにいたい。
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