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22 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
『ジーン・ワルツ』の誕生と『螺鈿迷宮』の死,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 上 (角川文庫) (文庫)
オリジナルは、2007年11月30日リリース。海堂氏はいつも小説というメスで日本医療の患部はどこか、を白日の下に曝す。『ジーン・ワルツ』では産婦人科医がなぜ激減したかだけでなく、明治時代のまま変わらない法律の矛盾や、アンケートばかりとっている厚生労働省の逼迫した現実への無反応・無為無策さ、名ばかりの少子化対策といったあらゆるものの問題点を全て提示していた。『ジーン・ワルツ』が人間の『誕生』への問題提起であるとすると、本作は人間の『死』に対する問題提起として書かれている。そしてこの2つの小説は対となって構想されたのでは、と思える。デビュー作の『チーム・バチスタ・・・』で既に死者へのMRI検査の重要性を説いているが、本作では医者とは切っても切れない『死』の問題と、現代医療にとって『死』とはどのような存在なのか、を読むものに気がつかせる。 そして頭を過ぎるのがマイケル・ムーアの『シッコ』だ。アメリカ医療の酷さはどことなく今の日本の医療の先の姿のように思えてならなかった。 ここに登場する桜宮病院の院長の言葉、『医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた、クソッタレの学問だ。お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な』が、この作品を象徴している。厚生労働省の考える『死』、病院の受け止める『死』、自殺志願者の『死』、末期癌患者の『死』・・・どれも同じ『死』であるはずなのにこの作品では違って感じられる。それは各々の『生』が螺鈿のように様々に光り輝いているからなのかもしれない。圧倒的な読後感を残す傑作である。
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「死」の意味,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 上 (角川文庫) (文庫)
東城大学医学部付属病院から舞台を移し、碧翠院桜宮病院でこの物語は展開します。登場人物も白鳥・田口コンビから白鳥・姫宮(氷姫)コンビに変わり、物語の主な語り手として天馬大吉と言う医学生が登場し活躍します。 碧翠院桜宮病院は、老人介護センター、ホスピス施設、寺院までを一体化した複合型病院になっています。 そこには、桜宮巌雄とすみれ、小百合の双子姉妹がいます。 この物語は、別宮葉子の依頼でそこに潜入した天馬大吉の冒険譚になっています。 ここで取り上げられるのは、今までのAiの問題に加えて「死」の問題が提起されます。「安楽死」の問題にも絡むこのデス・コントロールの問題は、改めて人間にとっての「死」の意味を問いかけてきます。 この病院にいるのは、他の病院で見捨てられた末期患者たちです。そんな彼らが役務を与えられて、限界を超えて生きながらえています。生命維持装置で生き続けさせられている患者と比べると雲泥の差です。 その他にも現代的な問題がいくつか提起されています。 昨今問題になっている「後期医療制度」の問題です。 この碧翠院桜宮病院が、どうにも経営が立ち行かなくなるのもこの制度のせいです。 「医療費の適正化」の名のもとに、終末期医療に対する社会保障費がどんどん削られているのです。 更には、医療問題とは直接関係ない「自殺サイト」の問題も取り上げられます。 こうした様々な問題を提起しながら、全体としてはエンターテイメントに徹した非常に面白い読み物になっています。 このあたりのバランスの良さに作者の非凡さを感じます。
20 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
軽く読めるけど、なかなかの完成度です,
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レビュー対象商品: 螺鈿迷宮 上 (角川文庫) (文庫)
現実の医療業界の問題を内容に織り込む小説を書くこの著者は、ここでは「終末期医療」の問題を取り上げていますが、読者にただ単にその存在を認識させるだけでなく、その裏に潜む「闇」の根の深さを認識させられるような描かれ方をしています。そのため、小説自体は上下通して比較的短時間で読み終わったものの、その「問題」の重さはしっかりと受けとめることができました。 また、ミステリーとしても、上巻から数々の「謎」を読者に提示し、「この先どうやって謎が明らかにされるんだろう」と読者を引き込む力がありますし、伏線の張り巡らし方もバランスがいいです。 現実の医療業界の問題点を、主軸をぶれさせることなくミステリーと融合させている、その完成度が今までで一番高いと感じます。 また、キャラクターの面からみると、『チーム・バチスタの栄光』『ナイチンゲールの沈黙』で、田口・白鳥コンビのやりとりの面白さを楽しんだ方々にとっては、こちらはそのコンビのやりとりはなく、田口自体、ほとんど出てこないため、いささかの寂しさを覚えるかもしれません。 しかし、その2作で名前は出ていた「氷姫」がついにここで登場します。切れ者なのか、天然なのかわからないそのキャラクターは、田口、白鳥にはない不思議な存在感。一読の価値ありです。
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