戦前、医大の卒業者は、徴兵で召集された場合は一兵卒として二等兵で入隊しなければならないが、
軍医見習士官として志願すれば、数か月の実務後に軍医中尉として遇されるという道を選ぶことができた。
一兵卒と士官待遇の差は大きく、誰もが志願し軍隊を経験することとなる。
その様な大学を卒業したばかりの若者の空襲、原爆、洞窟戦や、ソ連による占領、捕虜、戦犯などの体験談を作者がまとめ上げたものです。
(恐らく医学誌の寄稿文を作者の目で書き直したものと推測)
通常の軍隊記と比べると、前線での戦闘はないものの、徴兵検査員だったり、原爆症の調査だったりと他ではなかなか読むことのできない興味深い内容でした。
ただ『蝿の帝国』というタイトルの為に、この本を手に取るのを躊躇してしまわれる方が多いのではないかが心配です。
全15話のうち、蝿の出てくる話はたったの1話。わざわざこのタイトルにする必然性は全くなかった。
軍医たちの黙示録だけで十分で、そのほうがよかったと思います。