本作を読んだのがこのノベルス版だった。
のちに文庫にもなっているが、やはりこの版が著者には似合う。
のちの作品もほとんど新書版での刊行である。
ハルキノベルスの作品では、昭和の著名な事件を背景に取り入れる、というのが前提だった。
だが、本作ではそんな妙なところはない。
著者の評価があまり高くないのは、その徹底した遊び心のせいだと思う。
本作でもそれは良く表れているが、小説としての完成度とか、まとまりとか、レベルの高さというよりも、著者のとにかく読者をあっと言わせたい、という徹底したサービス精神だ。
それが、ひとによって好き嫌いが大きく分かれることになる原因なのだと思うう。
でも、私は、著者のこのサービス精神を評価したい。
門前典之氏や島田荘司氏とも共通するサービス精神と遊び心は、ミステリにとって大事なことだと思う。
そして、そんなミステリがつまらないわけがない。
本作はたしかに、ちょっと肩に力が入りすぎたというか、てんこ盛りすぎた感はある。
読み終えたら、おなかいっぱいになることは間違いない。
でも、ある意味ではもっと評価されても良い作品だと思う。
プロットに意味があるため、あまり詳しくストーリーを紹介しにくい。
文章もうまくはない。
でも、このビックリ、この意外性、私は面白かった。
読者を選ぶ作品というのは、こういう作品のことを言うのだろう。