収録された六編の中では、技巧と洗練で、米澤作品が一頭地を抜いて
いますが、越谷作品の容赦のないえげつなさも強烈な印象を残します。
■「さくら炎上」(北山猛邦)
人付き合いが苦手な高校一年生“私”のただ一人の友達である陽子。
そんな陽子が、春休みの最初の日に、同じ学校の男子と会っていた。
その後彼女は、思いもかけない行動に出て……。
学校という閉鎖的な〈場〉における思春期の閉塞と不安がもたらす悲劇。
■「毒入りローストビーフ事件」(桜坂洋)
××を下敷きにして異様なシチュエーションを描いた作品。
■「密室の本――真知博士 五十番目の事件」(村崎友)
アパートの密室の押し入れから消失した大量の本の謎。ラストの
どんでん返しで明かされる副題にまつわるホワイダニットが秀逸。
■「観客席からの眺め」(越谷オサム)
「いい友達」関係から踏み出せない元吹奏楽部員の“僕”と陽子。
二人は、人気者だった吹奏楽部の顧問が殺害された事件について
相手には打ち明けることのできない秘密を、それぞれに抱えていた……。
■「消えた左腕事件」(秋月涼介)
逆説的な真相と意外な犯人。
■「ナイフを失われた思い出の中に」(米澤穂信)
幼い姪を殺害したとされる少年の手記から、少年の心理と事件の真相を
読み解くという
作者お得意の手法が採られた暗号ミステリ。そして、
×を
嚆矢とする、《法と正義》というテーマに基づく社会派ミステリでもあります。
『さよなら妖精』に登場した太刀洗万智がルポライター
として事件にかかわる、
《ベルーフ》シリーズの短編。