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82 人中、77人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
何百冊か読んだ時代小説の中でこれがベスト,
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レビュー対象商品: 蝉しぐれ (文春文庫) (文庫)
「父を愧じてはならん」の言葉を残し、主人公の父親は刑死。残された少年は謀反人の子として蔑まれ、藩内で過酷な忍苦の日々を過ごす。しかし、その鬱屈したエネルギーを剣の修行で昇華し、少ないながらも堅い友情で結ばれた友を得ていく。青年剣士へと成長した主人公は、父を死に追いやった苛烈な派閥争いに巻き込まれ、自らの運命に立ち向かう。完成度の高いストーリー、端正な文章、常にベストを尽くした主人公が残す爽涼感、過ぎにし少年時代と淡い初恋への愛惜の念。藤沢周平の代表作というだけでなく、時代小説の最高傑作のひとつと言える。
47 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
作家の力量,
By 柴犬太郎 (大阪市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 蝉しぐれ (文春文庫) (文庫)
風景描写が素晴らしい。精緻な文章とはこうゆう文章を言うのだと思えた。純粋な文章の表現力に驚くことは少いが、GWに実家で父親の本棚にあったこの作品に驚いた。ファンが多いのは知っていたが、藤沢周平が優れた作家であると遅ればせながら知った。 主人公は江戸時代、北国のとある藩の下級武士の子である。当時の武士の子弟は儒学や剣術に励み、将来の官吏としての修行に励む。幼少から主人公は剣に抜群の才能をみせる。 藩の権力争いによる父親の横死などの困難に耐えながらも友情や剣術に励む姿が描かれる。その話の展開は無駄が無く、無理が無い。 奇抜な展開で構成された小説と対極に位置するような、丁寧な描写と無理の無い展開による構成は同時に強い説得力とリアリティを持つ。 主人公は平凡な半生を送るのではない。しかし、抜群の剣の腕前を持ちながらも、やはり主人公は普通の人間であり、藩という組織の内部抗争に翻弄される下級武士である。剣は主人公を助けるが、主人公を超人にはしない。 主人公は良い結末を迎えるが、読後に残るのはやはり切なさである。不幸な結末となった人々や藩という組織の非常さ、抗いようもない下級武士の悲哀、過ぎ行く少年期、それらに対する緻密な描写が主人公の活躍があっても心躍る物語ではなく、切ない物語にしている。 印象的な場面が多々ある。 冒頭の自然描写。 物静かな父が大声を上げて進言し、その確固たる良心に日頃の尊敬の念を深めた場面。 主人公が死罪となった父に思いを伝えられなかったことを悔やむ場面。 刑死した父の遺体を荷車に載せて牽く主人公の描写。 先輩の官吏に従って野山に分け入って農村を巡り、稲の作柄を相談する場面。 上げればきりがないが、精緻な文章がそれぞれの名場面を表現しており、それらが無理のない展開で連なっている。 それぞれの名場面の描写はおそらく、作者が相当の労力を掛けて書き上げた労作と思われる。そう思えるほど良く練られており、緻密である。
18 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
バブル期に誕生した古典小説,
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レビュー対象商品: 蝉しぐれ (文春文庫) (文庫)
イージーマネーがジャブジャブしていたあの頃、「根拠なき熱狂」が支配していたあの頃、日本人が物欲と西欧かぶれの二重苦を抱えて醜悪化の一途を辿ったバブル期に地方紙に連載(1986〜87年)された時代小説。バブルは死んだがこの小説は残った。残って日本人に美しい男女の恋の物語を語り続けている。映画化は顰蹙を買ったが(少なくとも私の周囲では)、テレビシリーズは名品で、外国で賞を取ったりしている。お隣さん同士の少年と少女が成長し、お互いを意識する年齢になる。若竹のような少年と可憐で楚々とした少女。二人は理想の男女の型に沿って作られたキャラだが、この「型」に込められた人間の希求というのがある。清く存在したい、という願い。作者の哀切もまた窺える。おそらく作者は当時の日本人の姿に傷ついていた。 結ばれるのが当然のような男女が世の理不尽に流されていく三十年弱の歳月を追う中で、若竹の少年は忍苦の中で悪声を放たず、他人と争わず、泣く時は一人で泣く。少女は権力者の寵を得てなお清楚な心を失わず、少年を愛し続け、おそらく彼女もまた一人で泣いている。この物語の人々は秘め事を秘め事のままにしておける。現代人は秘密を守るのが苦手だ。「理解される」ことに餓えているから。本書の男女は「きちんとした振る舞い」に重きを置く世界に生きている。 ラブストーリーを描くには実はこれほどの物語の厚みと段取りが必要なのだと、これほど的確な描写の分量と筆の調子の高さが必要なのだと、痛いほど実感させてもらえる一冊。超一流の技というのは気持ちの良いものです。
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