作者は、宮部みゆきの『火車』に感銘を受けて、料理人から作家に転向したという異色の経歴の持ち主。
さすが元料理人というだけあって、食事やスウィーツの表現は卓越していた。
特にスウィーツに関しては、まるで実物を目の前にして食しているかのような精彩な描写が光る。
読了後は、思わず洋菓子店に駆け込んでしまいたくなる衝動が沸き起こるぐらいだ。
また、飲食業界の実態や衛生管理など、一般人には知りえない裏側も垣間見れて、勉強になる。
ただし、肝心のミステリー部分は、いささか物足りない。
ミスリードが甘かったり、主人公が犯人追及に失敗する回数がやたら多かったり、
真犯人の動機がいまひとつ不明瞭だったりと、なんだか煮え切らない展開が多い。
厳しい評価をさせてもらえば、推理小説としては完成度が低い。
ミステリーとしてではなく、グルメ+業界小説とみなして読めばそれなりに楽しめるだろう。