乱歩の通俗長編第一作として有名だが、実はなかなかどうして面白い。
犯人の正体といい、乱歩が工夫を凝らしたことがよく分かる。
けっして本格ミステリではないが、スリラーとして、当時の読者を相当ハラハラドキドキさせたことであろう。
あの東京12チャンネル(現テレビ東京)の「江戸川乱歩シリーズ明智小五郎」の第一話だったのも、うなずけるものである。
当時中学生だった私は、女性の裸が出てくるだけで、ハラハラドキドキしたものだった。
名優の故伊丹十三が、楽しそうに出演していた。
ストーリーは、とにかく山また山の繰り返しで、息つく暇もないほどである。
もちろん、乱歩得意の迷宮「八幡の藪知らず」のほか、のちの通俗作品のネタの多くがチラチラと出てくる。
世間の評判はあまり高くないようであるが、私は好きだ。
余計なことを考えずに、乱歩の筆が進むままに、迷宮をさまよい、そのタッチに酔えばよいのだ。
ただし、犯人がちっとも意外じゃない。
でもそれもまた、いかにも乱歩らしくて、GOOD!だ。