父の死期が近づいていることを知った主人公は、戻ってくるつもりではなかった故郷の地を踏む。
出て行った頃と何も変わらないように見えるそこには、
いまもなお、思いなかばで分かれてしまった昔の恋人と、
忘れようとしても忘れられない過去のある出来事が横たわる。
「あきらめてしまった人々」が多く登場するクックの作品だが、
本作の鍵を握るのは、あきらめきれない気持ちだ。
それは事件のきっかけにもなり、解決への糸口にもなり、
同時にこの作品の魅力にもなっている。
少しずつ記憶の糸がほぐれていくにつれて、あらわになっていく真実にたちむかうとき、
主人公の横には、いつも大きな存在でいた人=父がいる。
父と息子、というこれもまたクックの作品のキーワードのひとつだが、
この作品を読んで救われる気持ちになったのは、この関係性のゴールのおかげかもしれない