ジョナサン・キャロルといえば、日本で出版されたらすぐに買っていた私。近頃ブランクがあると思っていたら、この本! これはたぶんキャロルの創作にたいする、ある種の悩み(デリケートでない、そして陳腐な言い方をすれば「生みの苦しみ」)からの脱却とこの本の主人公のある行き詰まりからの解放とがうまく連動している。物語で重要な役目を果たす、まるで「幻の女」の現代版かといえるほどの強烈な個性を持った女性の描き方がうまい!
ブルーの色調のなかのルージュのような存在感。私が不思議でならないのは、ジョナサン・キャロルが日本ではそれほど圧倒的な人気を保ち続けていないこと。サガンと翻訳家の朝吹登水子との関係のように、キャロルと浅羽 莢子さんを連想してしまいます。ひとつひとつのセンテンスがリズミカルで詩のよう。作者の文体の素晴らしさと翻訳家の才能とがうまく調和して、息がぴったりという感じ。コピーライター志望の人などこうした本を読むといいだろうな。少し気障と思えるぐらいの表現の数々。だれか映画化してくれないかなといつもキャロルの本を読むたびに思います、映像的でスマートで。今回はハイスクールの思い出に端を発しているところが、キャロルの創作における苦闘をあらわしているかのよう。ひさしぶりの楽しいキャロル体験でした。