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蜂の巣にキス (創元推理文庫)
 
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蜂の巣にキス (創元推理文庫) [文庫]

ジョナサン・キャロル , 浅羽 莢子
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

入り組んでいてせわしない。いつも飛び回っていて、その気になればいやというほど刺せる―“蜂の巣”。それが彼女の綽名。30年前に殺され、ぼくが死体を発見した美少女だ。彼女の事件を書くという試みに、作家であるぼくはスランプ脱出の望みをかけた。だが…真相を探るにつれ、絡みあい、もつれあう過去と現在、親と子、男と女。そしてぼくを脅し指図する謎の影。鬼才の傑作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

浅羽 莢子
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 352ページ
  • 出版社: 東京創元社 (2006/4/22)
  • ISBN-10: 4488547087
  • ISBN-13: 978-4488547080
  • 発売日: 2006/4/22
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 47,498位 (本のベストセラーを見る)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ZOZO
形式:文庫
ジョナサン・キャロルといえば、日本で出版されたらすぐに買っていた私。近頃ブランクがあると思っていたら、この本! これはたぶんキャロルの創作にたいする、ある種の悩み(デリケートでない、そして陳腐な言い方をすれば「生みの苦しみ」)からの脱却とこの本の主人公のある行き詰まりからの解放とがうまく連動している。物語で重要な役目を果たす、まるで「幻の女」の現代版かといえるほどの強烈な個性を持った女性の描き方がうまい!

ブルーの色調のなかのルージュのような存在感。私が不思議でならないのは、ジョナサン・キャロルが日本ではそれほど圧倒的な人気を保ち続けていないこと。サガンと翻訳家の朝吹登水子との関係のように、キャロルと浅羽 莢子さんを連想してしまいます。ひとつひとつのセンテンスがリズミカルで詩のよう。作者の文体の素晴らしさと翻訳家の才能とがうまく調和して、息がぴったりという感じ。コピーライター志望の人などこうした本を読むといいだろうな。少し気障と思えるぐらいの表現の数々。だれか映画化してくれないかなといつもキャロルの本を読むたびに思います、映像的でスマートで。今回はハイスクールの思い出に端を発しているところが、キャロルの創作における苦闘をあらわしているかのよう。ひさしぶりの楽しいキャロル体験でした。
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12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
キャロル9年ぶりの訳出。喜び勇んで本屋で購入後、あとがきの解説を読むと、「ええ?ダークファンタジーじゃないの?」

でもそんな心配は無用でした。いつもながらの超個性的でありながらリアリティあふれる登場人物達、しおりに挟んで持ち歩きたくなる深いセリフの数々。特に主人公が彼氏とケンカして落ちこんだ娘に言った言葉、胸にしみました。

物語は30年前に殺された「蜂の巣」というあだ名の女の子の死の真相を本にしようとした主人公が巻き込まれる事件を通した、ミステリーであり、有る意味ホラーであり、主人公の自分回帰の物語でもあります。キャロルファン、ミステリーファン必読です。
このレビューは参考になりましたか?
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 天使のくま VINE™ メンバー
形式:文庫
 キャロルといえば、ダークファンタジー、下手なホラーよりよほど怖い。何が怖いって、何も起きないのに何か変だっていうのが延々つづくあたりがこわい。もちろん、ただこわいだけじゃなく、そこにさまざまな人間どうしの愛が描かれていたりする。だからこそ、それが壊れていくことがすごく怖い理由の一つなのだけれども。
 けれども、「蜂の巣にキス」は怖くない。解説で豊崎由美が書くように「これって普通のミステリーじゃん」なのだ。スランプの作家、サミュエル・ベイヤーがかつて子供のころ、若い女性の死体を発見した話をめぐって、調査を開始する。そこで意外なことがわかったり、まきこまれたり、親友に再会したり、とまあそういう話なわけで、おもしろいけど、普通のミステリー。愛読者だと言って主人公に近づいてくるすごく変な女性も出てくるけれど、それほど怖いわけじゃない。蜂の巣というのは、主人公が子供の頃に発見した死体の女性のあだ名なのだけれど、これだってとても不思議な女性として生きていた。でも怖いわけじゃない。スティーヴン・キングがキャロルの作品が好きだっていう話だけれど、そのことに対するキャロルの返事ということもあるのかもしれない。だって、話は「スタンド・バイ・ミー」みたいでしょ。
 怖くはないけれども、蜂の巣の死の謎を追いながら、それによってまわりの人間が狙われたり殺されたりと、そんな展開なので、ページをめくる手は止まらない。止まらないけれども、それは本当に、キャロルのエンターテイメントの技術を徹底的に披露してくれている、そういうことかもしれない。主人公はやはり、エンターテイメントの作家であり、メインストリームの文学に対し、コンプレックスを持っているのだから。まあでも、それはキングへのオマージュということと重なりますね。
 多分、この小説でグっとくるのは、キャロルが繰り返し描いてきた、親子の愛なんだと思う。この小説には、重要な女性が何人か出てくる。蜂の巣をはじめ、愛読者で謎の女性ヴェロニカなど。でも主人公にとって最も大切なのは、娘のキャサンドラ。別れた三人目の妻とは冷たい関係であるにもかかわらず、娘との絆は強い。自分の仕事や恋愛よりも大切なのだから。でも、その関係がとても強いものであると同時に、変化していくものでもある、そうした移ろいの中に、人間のある種の限界を見て取ろうとする。それが時にひっくり返ってしまうこともある。そもそも、信じていた人間関係が破綻してしまうことこそが、最大の恐怖なのかもしれない。そして、いつもそんな予感がする、それがキャロルの小説の怖さを支えていたのかもしれない。そんなことを思っている。「月の骨」がまさに、生まれてこなかった子供との愛情の物語だった。そして「沈黙のあと」が、どうしようもなく親子関係が破綻してしまう物語だった。だとすれば、主人公のサミュエルと娘のキャサンドラが、むしろ強い絆と、同時にキャサンドラ自身がボーイフレンドをつくり、父親から離れていく、健全な成長にともなった関係の変化が描かれる。親子の愛情は、親にとっては永遠に等しいけれども、子供にとってはそうではない、そうした不対称があるけれども、主人公はそれを受け入れていく。そこには、関係の破綻による恐怖が描かれる余地はなかったのかもしれない、とも思う。その一方で、不幸な親子関係も描かれているし、それもまた、本書のキーポイントにはなっている。
 ダークファンタジーを期待すると裏切られるかもしれない(それでも、ヴェロニカ・レイクはそれなりにホラーな存在だけれでも)。けれども、人間関係のある種の不安を描くことにおいては、キャロルらしい作品なのだと思う。ぼくとしては、「月の骨」と並んで、好きな作品、ということになるな。キャロル入門として適切だとはおもわないけれども。
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