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蛍 (中公文庫)
 
 

蛍 (中公文庫) [文庫]

吉村 昭
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

たしかな生の軌跡を刻む人びとからは離れて、ひっそりと、危うく、生きつづける人間たち。その彼らさえ見逃しはしない、人生の出来事。遅い結婚生活をはじめた看守の特別休暇を描く「休暇」、角膜移植手術に全神経を集中させる、医師の不思議な日常を追う「眼」、幼い弟を川で事故死させた少年の内心をみつめる「蛍」など。ささやかな生活のなかに潜む非現実をとらえて、心にしみ透る、忘れられない小説9篇。

登録情報

  • 文庫: 284ページ
  • 出版社: 中央公論社 (1989/01)
  • ISBN-10: 4122015782
  • ISBN-13: 978-4122015784
  • 発売日: 1989/01
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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最も参考になったカスタマーレビュー
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ringmoo トップ500レビュアー
形式:文庫
たまたまこの本の中に所収されている「休暇」が映画化され、まもなく公開されると言うことで手にしましたが、読み始めると9編の短編に引き込まれてしまいました。

どの作品にも共通するのは、主人公の不自由な状況からの鋭い観察眼と、「死」の匂い、そして微妙な余韻を残すラストです。

冒頭の作品は「休暇」で、主人公は刑務所の看守で、彼はその職業故に縁の無かった結婚にようやくたどり着きます。そして、親族の死で有給休暇を使い切っていたために、死刑執行人としての勤めに志願し、特別休暇を得て新婚旅行に行きます。そこでの、彼のぎこちない態度が丁寧に描写されています。

表題作の「蛍」は、親戚の子どもの「死」、しかもそれに死んだ子どもの兄弟が関係していそうだという状況に主人公が立ち会います。そして、その残った男の子に対する細かな観察が始まります。しかし、彼はそこからの一歩は踏み出せません。

9編の中でこの二編の他で気に入ったのは、「霧の坂」です。病気療養中の主人公が、その宿で働く女中を観察し、その主人を観察します。結局、この女性は子どもと一緒に自殺するのですが、彼は結局傍観者の位置から踏み出せません。

どの作品も素晴らしいのですが、漠然とした結末は、その後がどうなるかもありますが、読者に、主人公たちと同様、傍観者で終始してしまうのではないですかと問われているようです。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
最高の一冊 2010/3/17
形式:文庫
省略の極みだが、言葉足らずでも手抜きでもない。良質な文学
このレビューは参考になりましたか?
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
著者は厖大で、多数の記録文学を読んだ後で、この短編集を読むと著者はどこかに長編執筆での取材中の事実を抱えて書いているのではないかと想像してしまう。
「休暇」では、「プリズンの満月」の取材で刑務所の看守の絞首刑への関わり方、勤務以外の日常生活をどんな風に過ごしているのかを捉えているのだろう。絞首刑の執行時のなまなましい描写、ばたばたする受刑者の足を抑えると特別休暇がもらえることを核に書かれている。
 「眼」では、心臓移植を扱った「神々の沈黙」でみられる著者の臓器移植へのなみなみならぬ関心からでた取材をもとにしているのだろう。
 「霧の坂」「光る雨」では長期間の結核療養の経験のなかに題材をとっている。あたかも著者の体験をもとに書いているようだ。
「橋」「小さな欠伸」では東京大空襲、「時間」では「冷たい夏、暑い夏」でみられるような身内の死を題材にしている。
 
 しかし、短編として独立していそうなのは表題作「蛍」と「老人と柵」だろう。前者では幼い弟を水死させてしまった兄の微妙な心理を描き、また後者では誰がつくったかわからない柵で拘束されていると訴えながら、柵の中で意外と心安やかに過ごした不思議な老人を描き、柵が心理学的に象徴的な意味をもった存在であることを匂わせている。
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