満州国は日本人にとっては現実逃避の場所であり、昭和の夢と可能性そのものだった。中国側から見れば、満州国は「偽満」で、石原莞爾たちはただの強欲な侵略者に過ぎないかもしれない。けれどそこには、あらゆる民族が平等・自由に暮らせる国という理想があり、その大学にはガンジーやトロツキーの招聘というプロジェクトまでがあった。
それらの理想は結局は絵に描いた餅で、結局は満州を守るために日本は日中戦争という泥沼に巻き込まれていったのだとしても、そこに生きた人々のことを、忘れてはいけないのではないか。
この漫画には、満州の「虹色の」夢の美しさとともに、その現実の醜さ、過酷さ、絶望的な暗さが描きこまれている。青年ウムボルトはやや理想的なキャラクターに傾きすぎている気がするが、日本軍人と蒙古のハーフという設定でなければこのように自由に、日本側・抗日側の視点を行き来できなかったのだろう。
読んでいて、刺激を受ける作品だ。素直に、もっと読まれてもいい物語と思ふ。特に、今のように、中国で反日感情?が盛り上がっているときには、近代史の複雑さを、少しでも心で理解するためには…。