芭蕉の言葉だそうです。夢の中にあっても現実のように行動しなくてはならない。そして現実にあって夢想してはならない。素晴らしい言葉ですね。至言です。この小説の主人公川田順の台詞として作品の中に挿入されています。しかし、この人本当にこの言葉が守れたんでしょうか?住友財閥の重鎮、由緒正しい家柄、そして宮内庁御用達の文学の教養。出来すぎクンのおじいちゃま。こんなパーフェクトなオールド・ジェントルマンが存在するんですねえ〜!そりゃあ、誰だって、京大教授の奥様じゃなくったって一目惚れです。年の差なんて問題じゃありません。と言ったところで、相手にも選択の自由はありますが。
ですけど、このふたりの道行ってあんまり読者が期待するほどロマンチックじゃないんですね。登場人物の性格そして出自経歴、結婚相手の職業は立派ですが、翻るに実際ふたりが辿った道程はごく平凡な不倫の物語になってしまった。例えば若しこのふたりが和歌の素晴らしい遣り取りをした。あのゲーテの「西東詩集」のように?それだったら、まだ素晴らしい作品になったかもしれない。でもそういうブンガク的なところが全然なくてただ何処か田舎に逃げて行って、貧乏暮らしを耐え忍んだ?それじゃあ、あんまりつまらない。そこが星三つになっちゃう理由です。