書名はあくまでも第1章の内容を捉えてのもの。ヴァーチャルな「ムシキング」の世界には熱中するが(一部の昆虫を除き)実物には見向きもしない子供たちを例に、あらゆるものが実物のもつ豊饒さや多様さ、複雑さを喪失して概念化(記号化)されてしまい、頭と体を使って自ら(虫を)捕え、整理し、調べ、考える機会(=正に忍耐と創造の機会)を奪い続ける教育状況に警鐘を鳴らす。
第2章は、昆虫そのものの生態環境に焦点を当て、農薬の大量使用、舗装道路やローカルな生態系を無視した街路樹の増加などが、虫ひいては土壌微生物の絶滅を惹起している状況を告発する。(中谷宇吉郎ではないが、「虫は地からの贈り物」ではないだろうか。虫そのものを守るのではなく、その生存環境を保障することが種の保存に不可欠であることは明らかであろう。)
なお、真面目だが笑えた発言を幾つか。奥本氏「「昆虫採集で虫を殺すのはけしからん」と言うけど、車で殺す数のほうが凄いんですよ」(111頁)。養老氏「捕虫網での虫捕りは武道なんだよ」(181頁)。いずれにせよ、自然の豊饒さや多様さ、複雑さを知らない日本人世代から、今後の国際社会の各所で渡り合っていけるだけの人材が輩出するとはとても思われない。