一言で言えば「多次元宇宙もの」の傑作なのだが、各世界で描かれる風刺が印象に残る作品。ある研究所で陽子ビーム偏向装置が故障して、8人が事故に巻き込まれる。各自が意識を失って、再度意識を取り戻す数秒の間、意識を取り戻した人間の順番に、その人物の精神世界に他の人物の精神が取り込まれる。意識を取り戻した人物はその精神世界では絶対的支配者となるのだ。
狂信的な異教崇拝者が支配し、その異教神への信仰が生活の規範となる世界。偽善・偏向に溢れた自称道徳的女性が支配し、支配者の意向にそむくものは生物であれ、金属であれ消失してしまう世界。強迫観念に捉われた偏執狂の女性が支配する破壊的世界。共産主義者が支配し、共産主義者が夢想するであろう資本主義社会の退廃と闘争に満ちた世界。
最後の世界は当時の東西冷戦時代を反映したものであろうが、その他の世界が映し出す風刺は現代にも生きている。多次元宇宙というSF的設定の下、偏向した特定の支配者が君臨する世界の恐怖を描き出した傑作。