楡周平の作品の面白さは、精妙に計算されたプロット、そして豊富なビジネス経験に裏打ちされた舞台設定の独自さだろう。麻薬、アメリカの大学生活などなど、彼の作品を通じて、読者は知らない世界を覗き見ることができる。
その意味で、本作も、楡周平の面白さがいかんなく発揮されている。新聞社が伝書鳩を通信に使っていた時代から始まり、ラジオ、テレビ、そして最後は現代の電子書籍まで、メディアの変遷を一人のメディア王の人生を軸に、彼が競争相手といかに戦ってきたかを描いており、ストーリー展開を楽しみながらあっという間に読めてしまう。
だが、読後感はちょっと虚しい。最後の結末は意外な結末ではあるのだが、無理やりつくった感じで登場人物の人物造型が破綻している印象を受ける。結末で、この人たち、いったいどんな人だったんだ、と思ってしまうのである。
楡さん、たぶんプロット優先で作品を構成し、そこにキャラをあてはめていくのでしょうね。だから、こういう失敗もあるのでしょう。ストーリーは秀逸なので、人物造型の破綻が残念です。