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話の主軸となるのは、一応4つも出てくる密室と意表をつくアリバイ・トリックである。これだけでも十分凄いが更に圧倒されるのはその間に展開される眩暈を起こしそうな絢爛たるペダントリーの世界である。この作品に影響され、模倣した作品も数多いがあまり話には関係のない、作者が自分の知識をひけらかしているだけのものが殆どである。しかしこの作品は次元が違う。一見荒唐無稽なペダントリーが事実に基づいたものであり、実にわかり易く描かれその断片が見事結末に集約する。文章も練り練られてうまい。
ミステリであることを忘れてしまうような思わず笑ってしまう描写も数あり、作品の長さを感じさせない。どこかに妙な親近感を抱かさせれ、青春小説ともとれそうな雰囲気さえある。
また生き生きとした登場人物達もこの作品の大きな魅力である。殺人事件がありながら登場人物のキャラクターと卓越した文章力でもって話の残虐性はあまり感じられずこの大作は一気に読めてしまうだろう。
多分ミステリビギナーでもすんなり受け入れられそうなところがこれまた脅威である。
中井氏の作品は他にも読んだが物凄い筆力を持った本当に凄い人だったと思う。
とにかく読むしかない。
私はこの作品を読破したした後、暫くは他のミステリはつまらくてしかたなかった。
一連の変死事件に対して複数の登場人物が推理合戦を試みるという趣向はバークリーの『毒入りチョコレート事件』を思わせます。しかし、本作では更に、変死事件が終わった後ではなく起きる前から推理合戦が始まっている点や、ある人の推理に他の人が反論する根拠が「そのトリックはノックスの十戒に違反しているからダメ」というようなとんでもないものである点など、とても風変わりな推理合戦となっています。いわゆる新本格派が盛んに試みているメタ本格的な視点を1964年に早くも提示していたという恐ろしい作品です。
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