IT(情報技術)革命とグローバリゼーションによって、世界市場は「統合」した。IT産業、自動車、鉄鋼などの産業は米国、中国市場と一体化し、「近代化経済圏」を形成している。一方、国境を容易に越えられない「ポスト近代経済圏」と呼ぶべきサービス産業はグローバル化から取り残され、長期停滞に陥っている。国内経済は近代化経済圏とポスト近代経済圏とに「分断」された。昨今の景気回復は、近代化経済圏の結果であって、政府の構造改革の成果ではない。米国や中国の動き次第で頓挫しかねない「虚構の景気回復」だと指摘する。
過去、ポスト近代経済圏を救済するため、過剰な金融緩和が行われてきたが、そのマネーは近代化経済圏に流入し、1次産品価格の急騰や素材インフレを引き起こした。ポスト近代経済圏では、今後、サービス価格がさらに下落してデフレが定着すると予想。日本経済は2極化が進み、分配が重要な経済政策になると指摘する。
経済の性格・構造が根本的に変わった今、1つの国家を均質的なものと見る従来の経済理論では、政策・景気観測を誤ると主張している。
(日経ビジネス 2005/06/20 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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例えば、「分断」とは、競争力があり米国や中国の高需要の恩恵を受ける製造業と、国内消費者の微弱かつ低成長の需要に依存するしかないサービス業(「ポスト近代経済圏」と命名)との間で起きている。2002年からの景気回復で、付加価値生産において、前者が10.4%成長に対して後者は1%成長だ。
その賃金格差は、かつては春闘により微修正されたが、1990年代後半からそれがなくなった。世界と競争する上で、低生産性の水準に足並みを揃えることが難しくなったからだ。フィリップス曲線が2000年以降、フラットになった事実などをもってその主張を補完する。
背景にあるのはポスト近代への構造変化であり、上記の格差是正のためには、サービス業における新ビジネスモデルの構築だと主張する。
そして、中世が近代に移行する段階で「活版印刷技術」と「宗教改革」が起きたように、物質・精神の両面における革新が必要だと言う。IT革命が物質的革新であろうから、求められるのは、宗教改革に匹敵する何らかの精神的革新だということになる。
最後の主張はやや大胆過ぎる感もあるが、そこに至るまでの「市場の統合と分断」という歴史的変化を論じる過程は、冒頭の繰り返しになるが、緻密で、指摘される事実と理論の紹介は非常に為になる。濃厚な内容を、コンパクト(本文231p)にまとめている。
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