『深淵のガランス』(2006年3月 第一刷発行)に続き、花師と絵画修復師のふたつの顔を持つ男、佐月恭壱(さつき きょういち)が活躍する連作短篇シリーズ第2弾。「虚栄の肖像」「葡萄と乳房」「秘画師遺聞」の三篇を収めています。
暗い翳を身にまとう主人公・佐月に持ちかけられる絵画修復の依頼。朱大人(しゅたいじん)と朱明花(しゅ めいか)の親娘、善ジイこと前畑善次朗(まえはた ぜんじろう)、若槻伸吾(わかつき しんご)、さらに冬の狐を名乗る女旗師など、謎めいた雰囲気を帯びた脇役たちが佐月の活動をサポートするところなどは、前作同様。
しかし、登場人物の顔見世ということもあり、ややせわしなく分かりづらかった前作に比べ、本書では話に落ち着きが生まれ、すっと心に馴染むものを感じましたね。前作よりも親しみやすかったです。
連作短篇ならではのつながりがあるので、この順番どおりに読んでいくのが吉。「葡萄と乳房」「秘画師遺聞」では、佐月にとって大切な人物が登場し、その人への佐月の想いが深化するところに話の深みもあるので、この読む順番は崩さないようにしたいですね。
ところで、本日10月4日付けの朝日新聞朝刊の第34面(社会欄)。「ゴッホの黒猫 やっぱりいた X線で解析、発見」の見出しの記事が、目にとまりました。なんだかとっても、北森 鴻のミステリの匂いがするなあと。あるいは、細野不ニ彦の漫画『ギャラリーフェイク』シリーズの匂いが・・・。
名画の裏に隠された別の顔を見つけるサプライズ。それは、北森鴻の「絵画修復師」シリーズのモチーフでもありますね。スリリングですねぇ。ぞくぞくさせられます。