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虚数 (文学の冒険シリーズ)
 
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虚数 (文学の冒険シリーズ) [単行本]

スタニスワフ レム , Stanislaw Lem , 長谷見 一雄 , 西 成彦 , 沼野 充義
5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 2,520 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

人体を透視することで人類を考察する「死の学問」の研究書『ネクロビア』バクテリアに英語を教えようとして、その予知能力を発見したアマチュア細菌学者が綴る「バクテリア未来学」の研究書『エルンティク』人間の手によらない文学作品「ビット文学」の研究書『ビット文学の歴史』未来を予測するコンピュータを使って執筆されている、「もっとも新しい」百科事典『ヴェストランド・エクステロペディア』の販売用パンフレット。人智を越えたコンピュータGOLEM 14による人類への講義を収めた『GOLEM 14』様々なジャンルにまたがるこれら5冊の「実在しない書物」の序文とギリシャ哲学から最新の宇宙物理学や遺伝子理論まで、人類の知のすべてを横断する『GOLEM 14』の2つの講義録を所収。架空の書評集『完全な真空』に続き、20世紀文学を代表する作家のひとりであるレムが、想像力の臨界を軽々と飛び越えて自在に描く「架空の書物」第2弾!知的仕掛けと諧謔に満ちた奇妙キテレツな作品集。

内容(「MARC」データベースより)

「バクテリア未来予知学」や「未来言語による百科事典」など〈実在しない書物〉の序文と、人智を超えたコンピュータ、GOLEMによる人類への講義を収録。知的仕掛けと諧謔に満ちた奇妙キテレツな作品集。

登録情報

  • 単行本: 326ページ
  • 出版社: 国書刊行会 (1998/02)
  • ISBN-10: 4336035938
  • ISBN-13: 978-4336035936
  • 発売日: 1998/02
  • 商品の寸法: 19 x 13.6 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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ポーランドで「虚数」として出版された「架空の書物の序文集」と、後年別に記された「GOLEM XIV」を併せて収録している。両者のリンクとしては、「虚数」の中の一編「ヴェストランド・エクステロペディア」にGOLEMに関する記述があり、またそれ以上に、知性と肉体に関する考察という点で通底している。

序文集「虚数」は、後半の「GOLEM XIV」への程よいイントロダクションになっている。「虚数」の各編は、様々な衒学的脱線であふれかえっているが、そのすべてにおいて、知性と肉体について言及している。そこから立ち上がってくる問いは、知性は、人間の肉体という仕様に依存する概念なのか、ということだ。肉体、というか人間という物理的存在に拘泥した「ネクロビア」への序文を嚆矢として、その後に展開されるのは、言語を学んだ微生物、機械による文学、コンピュータによる未来予測を編纂した未来百科事典といった、人間以外の知性を題材とした弾けとんだ話だ。

そして、人間が造りだした、人間以上の知性を持つコンピュータ「GOLEM XIV」による人間への講義録の形式を取る「GOLEM XIV」。この中で、GOLEMは、人間について語り、自己について語り、知性について語る。その全貌は到底把握しきれないが、根本にあるアイディアの手触り、手応えは圧倒的。

以下、ぼくの個人的解釈になるが、「知性」は、この地球上では「ヒト」という生物種に至って創発されたが、より一般的な「知性」の在りようは、ヒトの生物学的構造や遺伝情報に拘束されるものではない、というのが本書の中核にある主張である。ヒトが持っている生物学的デザインは、高い知性を持つために最適化されたものではなく、より現実的な、生き抜き、殖えるために最適化されてきている。そこに運良く知性が宿り、現在の程度まで到達したが、人間の到達しうる知性は、ヒトの生物学的デザインにどうしようもなく縛られている、というわけだ。そして、人間が造りあげた計算機であるGOLEMは、そのデザインのくびきを断ち切った次世代の知性であり、人間が到達し得ない、理解の及ばないところにまで達している。

これは絶望的であり、なおかつ心揺さぶられる言明である。ぼくは、基本的にはまったくそのとおりだと思う。その上で、人間がもがき回る、人間の知性が探り当てられる知識もまた、事実上無限であり得ると信じられるからだ。限られたハードウェアの上で、エネルギー吸収的に営まれるぼく自身の知性が、いかほどのものを紡ぎだせるのか、落胆よりもむしろ勇気づけられた。どの程度のものであれ、自分にはどうやら知性と呼べるものが備わっていることに感謝したいし、そのポテンシャルをフルに引き出してみたいと思う。

レム亡きいま、知性に関する思索を文字通り「空前絶後」の完成度で示した本書に及ぶものはおろか、類似する文学作品すら、今後産まれる望みはないように思える。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
レムのSF小説を貫くテーマを挙げろと言われれば、僕は人類とは別種の知性との交流を挙げたい。
最も知られた作品である『ソラリス』をはじめ、彼の小説には地球外からもたらされる、
人類には意味を解読することができない情報と、それを発信する知性がしばしば登場する。

この作品集『虚数』にも、それは見られる。
バクテリアが文字を獲得する一遍を除いて、
本作で、別種の知性を獲得するものは、コンピューターだ。

人類の知性を実数軸とするならば、本書で描かれるコンピューターの知性はそれに直行する虚数軸と言えるだろう。

形式については、僕はなんとも言えない。
さすがにこれほどの着想を小説として描き出すのは、さしものレムも手がつけられなかったか、と思うだけだ。

しかし、本書の着想は本当に面白い。
現在のコンピューターを巡る知のあり方は、人の知性のあり方に束縛されているのではないか?
コンピューターが意識を獲得した時、コンピューターはコンピューターのための知を獲得するのではないか?
人類が十進法に慣れ親しんでいるのは、指が十本だからだ、という説があるように、
私たちの知性は、私たちの肉体のあり方とまったく無関係ではなさそうだ。
ならば、コンピューターが意識を獲得し、世界を認識し、自ら知の体系を築き上げはじめたとき、
そのあり方は人類とは異なった物となるのではないか。それがレムが本書で展開する発想だ。
そして、その時人類は自らが人であるということの限界を知るだろう。

荒唐無稽といえばそうかもしれない。
しかし、レムにとっては、自らが人であるがゆえに逃れられない限界は、終生描き続けずには要られないテーマだった。
そして本書は本当に、未来を支配する知性を描き出す、フィクションを越えた未来の序文となるかもしれない。
このレビューは参考になりましたか?
7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By もあ
形式:単行本
正直言って余り評価してないのよ。多分「浴室で発見された手記」
あたりがターニングポイントになったのかも知れないけれど
「完全なる真空」よりももっとどうしようも無い作品群と
個人的には思ってまーす。出来不出来があるのはフィリップ・ディックだって
そうなんだからしょうがないんだけれども、レムの場合は進む方向を
自分で見定め選択してゲンダイブンガクへ行ってしまった感があるわ。
「手記」を読むと不条理SFと不条理ブンガクとの違いがわかるし
本作のゴーレムも偉そうに滔滔と語ってるけれど、何か岸田秀「唯幻論」と
大して変わらないような印象も受けるし。ポーランド語からの翻訳の
限界なのかしら。でも「枯草熱・天の声」「ソラリス」はそれほどでも
ないし、あとよく言われてるのが深見弾氏の訳がロシア語からの
ダブルトランスレーションの問題。文学作品の味わい、特に
海外文学の場合、翻訳に左右される点も大きいんだけれど読み手の側の
「波長」とそのときにマッチングしてるか否かの問題も大きそう。
個人的にはレムは原則SF作家である事を基点にして射程を広げて
行って欲しかったし、カートヴォネガットやハーランエリスンも
同じ轍を踏んじゃったような感もあるのよ。でもアレだけの大作を
残して84歳で大往生だったんだから、トータルで考えると
やっぱり偉大な作家だったんだわ。本作はハードカバーでなくて
文庫本だったら手が疲れないからラクに読めそう。短編集だし。
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