本能寺の変で偉大なる父,織田信長を失った信雄.小田原の役で関東北条氏の滅亡を経験した氏規.本作品はこの両名の生き様を見事に描く.
信雄は信長の次男であり,長男信忠,三男信孝が優秀であったとされるのに対し,愚鈍な人物として歴史上その名を残している.一方の氏規は関東北条氏三代目の北条氏康の五男であり,四代目を継いだ長男の氏政や五代目の氏直よりも優秀であったとされる.信雄も氏規も,直接的か間接的かの違いはあるものの,豊臣秀吉によりその力を奪われた者である.愚鈍であっても優秀であっても,“日本国開闢以来おそらく最も自己肥大化した人物”である秀吉からは,それほど大差ない扱いを受ける.その中で本作品は,「いかなる状況に置かれても生き残る」ということの大切さを教えてくれる.
本作品を読むと,織田家滅亡の一因となってしまった信雄も,北条家滅亡を止めることのできなかった氏規も好きになる.両名とも戦国時代の華ではないが,華となるような人物史を読み終えた方には,お薦めの一冊である.