スコアラーという裏方役として、実に四半世紀も阪神タイガースを支えてきた三宅博さんによる初めての著書。北京五輪でも星野ジャパンのスコアラーを務めた情報の収集および解析のノウハウ、そうしたデータを実際にプロの試合に活かす方法などが微に入り細で解説されている点は期待以上でしたし、投げる、打つ、守る、走るに関して、野球というスポーツを観る眼に新しい要素を加えてくれる一冊だと思います。今現在もプレーしている全国の野球人にも非常に参考になるのではないでしょうか。
しかし、本書の楽しみはマニアックな面だけにあらず、とでも言うべきでしょうか。ユニホーム組の球団関係者の中で、最も近い位置から阪神タイガースという人気球団を見てきた三宅さんだけが知りうる秘話が、第5章「阪神を変えた3人の名将」と第6章「思い出のスコアシート」に凝縮されています。スコアラーという職業を通して語られる野村克也氏の功罪、三冠王ランディー・バースの隠された素顔、日本一になった1985年の裏話などは初めて見聞きするものばかりでしたし、第1章「拝啓 和田豊様」からはBクラスに甘んじた昨シーズンから一転、和田豊新監督に率いられる今シーズンの阪神タイガースが優勝争いに絡んでくるのでは、という期待感がひしひしと伝わってきます。
野球というスポーツを愛する人間への実用書として、そして虎党を含めた野球ファンを満足させるノンフィクションとして。2つの顔をもつ読み応え十分の一冊だと思います。