虎バカのファンキーなじいちゃんとヘタレだけど心優しい孫の、18年にわたる愛と笑いと涙の物語。
最初は阪神ファンをターゲットを絞った定番の大阪小説かなと思いましたが、読み進めていくうちに「作者は大阪の三世代家族の喜びと悲しみを大河小説として書いているのだ」ということがわかり、家族の絆、青春、恋愛、介護問題、延命問題まで盛り込んだ異色作だと感じました。阪神タイガースが大好きで、バカさ加減がぶっとんでいるんだけど、とてもキュートな正三じいちゃんがとにかく素敵です。それを取り巻く個性豊かな登場人物たちの人間描写もリアリティがあって上手い。作者の高い筆力を感じます。
わけあって、生で阪神優勝を見たことがない正三じいちゃんに、死ぬ前に一度でいいから優勝を見せてあげたいと願う孫の雅之。しかし、他の家族は野球に無関心で、肝心のタイガースも昭和から平成に変わり、時代が流れても最下位ばかり。一方の雅之は自分の人生の不甲斐なさとダメ虎を重ね、鬱屈していく。周囲の家族も少しずつ変化していき・・・。時間の流れと家族の変化が切なくて、心地良くて、久しぶりに胸が熱くなって、ページをめくる手が震えました。
特にシーズンオフに二人で甲子園へ行くシーンは何度読んでも号泣です。いや、後半はずっと泣きっぱなしです。すべての野球ファンは勿論ですが、野球を知らなくても家族を愛する人なら誰でも感動できると思います。