野崎六助の「解説」には、ボブ・リー・スワガーのシリーズ「第6作」とあるが、私はあえてボブの父親アールの物語も含めて、本書を<ボブ・リー・スワガー&アール・スワガー>劇場第10弾と呼ばせてもらう。
元ヴェトナム反戦活動家4人が立て続けに射殺。その、遥か遠距離からの狙撃は正確無比。FBIは、元海兵隊員でヴェトナム戦争時の名スナイパーで、今は重大な精神疾患を抱えた67才の男を容疑者と断定するが、彼もまた自殺と思われる状態で発見される。
正確すぎる射撃、揃いすぎた証拠に疑問を抱いた捜査指揮官はボブに調査を依頼する。ここに大企業のオーナーで富豪の男を黒幕とする、コンピューター内蔵の最新鋭ハイテク・照準器<iSniper>を擁する、アイルランドの傭兵狙撃チームとボブとの、手に汗握る、命を賭けた壮絶な闘いが始まる。
本書の読みどころは何といって還暦を過ぎてなお、強靭な精神力、持久力、そして誰にも負けないスナイパーとしての銃の腕前を誇るボブの孤高の闘いであろうが、物語にリーダビリティーと疾走感とをもたらしている作者ハンターの、事典と見紛うばかりの、マニアックなまでの銃器への陶酔ぶりも見逃せない。
前々作『四十七人目の男』(’07年、訳出は’08年)前作『黄昏の狙撃手』(’08年、訳出は’09年)は少し物足りなさを感じたが、本書は、シリーズ第1作の『極大射程』(’93年、訳出は’98年・’99年「このミステリーがすごい!」海外編第1位)の原点に還ったかのような、ファンも納得する、一大ガンアクション・エンターテインメント巨編である。