本書は、ベトナム戦争帰還兵でスナイパーのボブ・リー・スワガーを主人公とするシリーズ第六作です。長く続いているシリーズは通して読んでいないと、登場人物の関係が分からなかったり、知らない人物の近況などが入っていて疎外感を感じることがままあります。本シリーズもシリーズの全体像に縛られ、近年精彩を欠いていました。しかし、本作に関してはこのような懸念はありません。従来の脇役は最小限に抑えられ、今までシリーズを読んだことのない読者が読んでも断然面白い冒険アクションに仕上がっています。
そして、主人公の人物像が本作の骨格を支えています。殺人の技に長けた元兵士の彼はチームを持たず単独でなぞに挑みます。また友を決して見捨てない意志を貫きます。この人物像は一部武術家を思わせ、本国ではエキセントリックな魅力になり、日本ではどこなく親しみを覚えてしまいます。本作はこのキャラがプロットにぴったり収まっています。
ファンとしてはシリーズを知らない読者にぜひ読んでいただきたい作品です。シリーズを紐解けとはいうつもりは毛頭ありません。もしお気に召しましたら、本シリーズ第一作の
極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)を紐解くだけで十分シリーズの醍醐味を味わうことが可能でしょう。
【追記】
最後の〈解説〉に映像化するならスワガーは、ニック・ノルティが最適とありましたが、私ならもう少し知的なラッセル・クロウですね。皆さんはいかがでしょう?