親本は分厚い愛蔵版シリーズ3巻本。分冊文庫化シリーズの2冊目にあたる本書には、著者が遺したSF短篇の中でも執筆時期が比較的新しいものが主にまとめられている。
個人的なベスト作は「ユメカゲロウ」だ。飛躍の少ないストーリー展開は地味に感じられるかもしれないが、それだけに読者の現実と地続きで、すぐそこにあるふしぎな世界に気づかないまま日々を生きている自分をかえりみてふと空を見上げたくなる。
そういえばこの短篇でおぼえたシリアゲムシという昆虫の実物を、つい最近になってようやく「あっ、これのことか!」と同定できた。初読から二十数年後の話である。
収録作:メフィスト惨歌/倍速/マイホーム/侵略者/マイロボット/テレパ椎/ユメカゲロウ/裏町裏通り名画館/有名人販売株式会社/殺され屋