近年のマンガ技術書の類を見ますと、マニアックな技術が持て囃され、しかも作画技術に偏った本を数多くみかけるような気がします。しかし、本書は国民的マンガ作品と言っても過言ではない『ドラえもん』の作者が、自分自身の体験を紐解きつつ、キャラクター作りから演出についてまで、幅広く語っており、好感が持てます。
本書の中で特に心に残ったのは、最初は自分が楽しむだけのものであったマンガも、それが家族という狭い範囲で受ける状態から、クラスメートたちへと広がり、それが不特定多数の読者にも共感を持って迎えられればプロにもなれるかもという、非常に解りやすいファンの同心円的な広がりを早い段階で説いていることでしょう。
残念ながら、特定少数にしかわからないような技術を寄せ集めて、声の大きなマニアに受ければ良いという入門書が目につきます。マンガが売れなくなったと言われる時代ですから、確実な需要が計算できるオタク層向けの作品作りが氾濫し、またそういう人間向けの技術論が重宝される現状では、本書のような小学生や中学生向けに書かれた本は、侮られがちです。
しかしながら、オーソドックスで基本的な表現技術をレクチャーする本書は、そのような作画技術偏重の本よりもはるかに有用でしょう。私達はついつい狭い範囲の特定少数に受けることが、何かレベルが高いことのように思ってしまいがちですし、そういう側面もなくはないとは思います。しかし本書を読むと、大人から子供までちゃんと読めて、楽しめるためには本当は高い技術が必要なんだと、あらためて気づかせてくれます。