「恩讐の彼方に」がいい。カルト映画と言っていい「エル・トポ」。「恩讐の彼方に」が、「エル・トポ」のベースになっているという評論を読んで、興味が湧き読んでみました。
江戸時代、主人を殺害すという当時の価値観において極悪の行為をして、それでも正当化する主人公。逃避行のなかで自分の行いを客観視できる場面に遭遇し、自分のマイナスの側面にやっと気づく。迷い、苦しみ、何ができるのか?罪悪感、苦しみ、憎しみなどいくら観念的に考えてもなにも生じない、身体を絡ませて行動していくことで、少しづつ解放され、信念が固まり、尊敬を得られていく姿が描かれている。そこには、本人にとって、人からの評価など関係のない、僭越な表現で恐縮するが、自分の魂を救うための行為というものだろうか、長い歳月をかけて一心不乱に取り組む姿が描かれている。その行きつく先に見えてくるものとは何か。読了後、余韻と想像が交差する。
読みにくい漢字(そんなに読みにくいとは思えないが?)にはルビを振っているし、本書の後半で語句の説明もしています。作品の解説も一部混じっています。それも参考になります。このreviewを読んで、興味があっても読みにくいという印象を持たれたならば、そんなことはないですよと言いたい。短編だし隙間時間で十分いい読書体験ができると思いますし、一度読めばまた再読したくなるでしょう。お薦めです。