「薬物依存症の領域は、精神医学における暗黒大陸だ。」
この一文を見て、暗澹たる気持ちにさせられる当事者は、私だけではあるまい。
物質依存症はよく「否認の病」と称せられるが、最初に接触すべき、当の精神科医から
「否認」を受けた暁には、患者は何処へ行けばよいのだろうか。
暗黒大陸に放り出された当事者たちは、運がよければ自助グループに繋がるか、
回復することなく漂流するほかないのが実態である。
本書は広義の「アディクション」概念を包含した物質依存の概説書である。だが、単なる
概説書ではない。その通底したメッセージは、単純化すれば「医師よ、依存症に向き合え」
であろう。
少なくとも、精神科を標ぼうする医師には、是非一読をお願いしたい。
また、依存症の当事者にとっても、自己の疾患を客観視する意味からも、読まれることを
おすすめする。医療関係者向けに書かれているため、平易でない部分もあるが、当事者に
取っても、意味のある一冊である。