とっても前向き、未来志向でグローバルな視野に基いた一冊。既に薪好きの人だけでなく、子育てに取り組む人、スローライフに興味がある人、木質バイオマスや再生可能エネルギー、まちづくり、環境教育、地方行政に関わる人にもお勧めです。また、健康的で、快適、効率の高い薪の蓄熱暖房を知るのにも格好です。
岩手県在住の著者は、役所で働く森林技術者、木質バイオマス研究者、薪割りストでツーキニスト、そして5子の父。20年来ライフワークとして、薪を割り、薪で暖房し、様々な木質バイオマス利用の普及活動を行ってきた同氏の著述は説得力のあるもの。
特に印象的だったのは、著者の子供時代からの夢である森の恵みを活かした暮らしを実現するまでの話と、薪を絆とした深澤家の5人の子育ての話。子供の巣立ちを機に、これまでの薪のある暮らしと子育ての体験が、子供達の視点も取り入れながら語られている。身近な自然の豊かな岩手での暮らし、そして両親の丁寧な生活の姿勢が、子供達にとっては人生の宝物になった違いない。また、より広く未来の世代に薪利用の楽しさと意味を伝えるために、著者が携る様々な地域の子供たちを対象とした森林啓蒙活動の様子も面白かった。
それ以外にも、木質バイオマス利用の最新状況の取材成果も満載だ。模範事例では、蓄熱薪暖房を導入した人々や、様々なスタイルの薪を使った暮らし、薪生産・供給活動、薪普及イベントなどが報告されている。また、現在の日本の木質バイオマス利用について、乱用ではなく、「活用」するための政策的な提言もなるほど、と思う。そして最後に、「薪供給ビジネス」や「薪のある暮らしコンサルタント」といった職業の未来性を語る。世界的にも森林が豊かな日本。日本の未来には木質バイオマスと薪は欠かせない。だがその利用方法は、地方の暮らしと経済を豊かにするようなものでなくてはならない、と改めて感じた。