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12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
リンボウ先生「渾身」の歴史小説,
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レビュー対象商品: 薩摩スチューデント、西へ (単行本)
やっと出た! 雑誌連載中から「リンボウ先生が歴史小説ー?」とファンも話題にしていた小説。英国への造詣も深いリンボウ先生ですが、古書籍の専門家であることを踏まえれば、日英関係の出会いをひもとく、こんな小説を書かれたのは納得できます。鹿児島方言で森有礼や五代友厚、畠山義成らをイキイキと描いています。リンボウ先生「渾身」の歴史長編!
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
登場人物群の、渡航旅程における日々の観想描写の小説。,
By Todd "Todd" (川崎市麻生区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 薩摩スチューデント、西へ (単行本)
幕末における薩摩藩士19人の渡英物語。
であれば、 英国において、 彼らがどのように彼我の差を捉え、 どのような辛苦を体験し、 何を学び、帰国してそれがどのように生き、あるいか生きず、 渡英がその後の彼らの人生にどのように影響したか、 を描くのではないか、 と読者は予感してこの作品を読むのでないか。 本作品は、それらについては、 後半、6分の1ほどの量で事実を淡々と描くことにとどめている。 作品の中心を占めるのは、 19人の渡英道程において、 彼らが見て感じた、その様である。 渡英途上、中国、インド等、さまざまな地に停留する。 停留地における経験とそこで彼らが感じたことについての 描写が本作品の主要要素である。 英国への途上において、 彼らの攘夷の想いが、次第に開国に移行していく。 その様が精密に描写される。 読み進むに連れ、19人の心情に、読んでいるこちらも同化する思いを持った。 すばらしい小説である。 一方、 天下国家を念頭に置いて生きた、 幕末の青年群を描く小説として、 上に挙げた要素にもっと比重を置いて欲しい、 という思いを多くの読者は持つのではないか、 と、著者のために、それを少し勿体無く感じた。 素材が大きいために、 彼らと日本国家の深刻な相互作用について もっと林さんに教えて欲しい、 読みたい、と感じた。 骨格については以上で、以下はデテールについての感想である。 薩摩人19人の会話が薩摩弁で描かれている。 この薩摩弁の正確さは、 特筆すべきものではないか。 薩摩弁を文字化した小説は多数あるが、 例えば「翔ぶが如く」に比しても、 その正確さは群を抜くのではないか。 林さんはどのようにして薩摩弁をこのように表現しえたのであろうか。 もう一点は、 登場人物中、 五代友厚の人物が、その磊落さ、先見性など、 圧倒的な人間的魅力を放っている。 本作品は、19人を均等に描くことに意を用いているが、 五代友厚に焦点を絞って、 その人物を描いたら、 林さんの筆力によって、 歴史に残る作品が生まれるのではないか。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
希望の船出とやがて悲しき結末。,
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レビュー対象商品: 薩摩スチューデント、西へ (単行本)
「イギリスはおいしい」の林望さんがこういう歴史記録小説を書けるのだ、と驚きました。1865年違法でも軍事/医学/理学を学びに、ロンドンに留学しにいった15人の学生と五代友厚ら引率者達を史料に基づいて書いているようです。「深夜特急」(沢木耕太郎)のように、わくわくしながら読む内に、西に船が進んでいきます。
小生の印象に残った点は以下です。 ・尊皇攘夷の人も、香港、シンガポール、ボンベイと英国の力を見る内に、「知らなかったことの恐ろしさ」「交易の大事さ」「弱肉強食と慈愛を併せ持つ英国文化」を体感していく。 ・五代/薩摩の貿易力を元に、一等船室で英国へ。グラバーが手厚く手配。 ・武市指揮下で吉田東洋を切った土佐人:高見弥一も参加 ・インド人から「南北戦争で綿花高騰」を五代が聞く。 ・フランス(ナポレオン3世)が押し進めるスエズ運河はまだ工事中。リスクをシェアする会社制度の力を見る。対抗する英国の蒸気機関車でアレキサンドリアへ。 ・グラバーや旅の引率者はスコットランド人。 ・ロンドンの6月に到着し、ユニヴァーシティ・カレッジが開講する9月までは、英語と理科を家庭教師から勉強。蒸気トラクタの見学では、構造理解/習得の早さで工場主に感心される。 ・数年前に付いた長州からの留学生(学費打切りで困窮中)とも合流。 ・薩摩も、蒸気船/武器購入費で金がなくなり、本来数年予定の留学は1年以内に中断。帰国したり、米国神秘主義的キリスト教団:ハリス教団に入ったりしてバラバラに。 ・米国ハリス教団に入ったものの内、 畠山善成は脱退して、米国ラトガス・カレッジで勉強、帰国して岩倉使節団通訳/記録係になり、東大(東京開成学校)の初代校長/国会図書館/博物館館長に。34歳で結核で死去。 松村淳蔵も脱退して、ラトガス・カレッジを卒業後、アナポリス海軍学校卒で、帰国。海軍中佐に。海軍中将になり1919年天寿全う。 吉田清成も脱退して、ラトガス・カレッジで勉強、ウィルブラム大で財務を修め、帰国後は大蔵省、外務省、農商務、枢密院顧問となり、47歳で死去。 鮫島尚信は、ハリスから日本に帰され外務次官に。駐仏公使兼ポルトガル・スペイン公使の過労で脳出血で36歳で死去。 森有礼も日本に帰され外務卿に。右翼に刺されて43歳で死去。 長沢鼎は、ハリス教団のカリフォルニア州サンタローザ転居にも同行。カリフォルニアの葡萄王となる。1934年長寿を全う。 鬱病のようになった者、帰国後消息不明の者、出家した者、そして多くは短命でした。意気込んで行ったロンドン留学では1年も勉強できませんでした。最も輝いていたのは、行きの一等船室の2ヶ月の船中だったのかも。13歳で渡英し、サンタローザに小さな記念館がある長沢鼎は、何度か鹿児島に帰省しましたが、どのような気持ちだったのでしょう...。最初の明るさと「やがて悲しき」結末と。時代のうねりを感じます。
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