漫画のタッチは10年、20年前によく見た雰囲気で、
その頃から漫画を読み始めた私にとっては、どことなく懐かしい印象だった。
しかし物語自体は、いまのこの時代の感覚でなければ描けないような気がする。
ほんのすこし前でもだめ。
『日曜日に自殺』のあの感覚。90年代のにおいがする、あの感じ。
「ビデオテープ標準で録ったよ」というセリフに、衝撃を受けた。
当時はきっと、こんなセリフを誰も描けなかった。
描く必要もなかった。
いちばん好きだった『遠い日のBOY』は、
すとんと入ってくる言葉が、あちこちにちらばっていた。
そして冷たい空気が支配した画面が時々暖かくなるところがあって、
どうにも主人公の胸の奥に秘められた感情を、見せつけられてしまう。
それにしても、装丁がいい。
タイトルとあいまって、本棚の中にこの本があるとはっとする。
おそらく、好き嫌いは分かれるだろう。
「ああ面白い!」という類では決してない。
いまの時代でなければ世に出なかったのではないかという気がする一方で、
よく最近の漫画市場でこういう漫画が出版できたなと驚く。
この本が書店に並んでいるのを見ると、
まだまだ漫画捨てたもんじゃない、とひそかに希望を持ってしまう。