与謝蕪村の俳句を中心にその文学を縦横に語りつくした決定版といってよい本。朝日新聞日曜版に93年1月から95年3月まで連載され、その当時から読むのが楽しみで私はすっかり蕪村好きになった。本書はそれに加筆訂正を行ったもの。蕪村を映像詩人と捉え、その作品の素晴らしさをカメラの動きやレンズの選択に例えた、映画畑出身の著者らしい解説が秀逸。また、蕪村の俳句は人間賛歌の文学であるとして写生を至上とする俳句よりいかに優れているかを説く著者の俳句観には大いに共感する。季語毎に章が立てられ、日本の四季を二巡りする構成となっており、蕪村の句で日本の自然の美を語る書ともなっている。最後に、蕪村独自の文学の高みといってよい「北寿老仙をいたむ」、「春風馬堤曲」もしっかり採り上ている。それら作品を含め、蕪村文学の全体像をつかむことができる素晴らしい本。
連載時の、蕪村作品のイメージをよく伝えていた挿絵があれば完璧だったのだが。