出会いは二十年以上も前に遡る著書であるが、今なお時々愛読する。ふっと蕪村に会いたくなる時、懐かしい俳句の一つや二つを読みたくなる時、落ち込んで慰めが欲しい時などが再読の機会となる。郷愁性、青春性、牧歌的、叙情的、叙景的等いろいろ蕪村俳句の特徴を挙げることができる。蕪村の俳句は、概して「明るい」、「懐かしい」、「精神的に軽くしてくれる」、「慰められる」という印象がある。丁度クラシックにおけるモーツァルトの曲と似た位置付けであろうか。蕪村俳句を読む時は、モーツァルトの曲を聴き精神的に高揚されるのと同じような状況を生み出すと言えないだろうか。
なお、嘗て知人に名著として薦められ、読んだ「郷愁の詩人 与謝蕪村」(萩原朔太郎著)は、蕪村俳句を理解する上で至極参考になる優れた解説書と思う。薄い文庫本であるので、是非にお薦めしたい。
また、蕪村は高名な画家でもあり、俳句に通じた素晴らしい絵がある。俳句の嗜好は年代に応じて変化するが、今また拾い読みしてみれば、以下のような蕪村俳句が好みとして挙げられる。
さしぬきを足でぬぐ夜や朧月
月に聞て蛙ながむる田面かな
にほひある衣も畳まず春の暮
洗足の盥も漏りてゆく春や
春惜しむ宿やあふみの置炬燵
腹あしき僧こぼし行施米哉
初汐に追われてのぼる小魚哉
淋し身に杖わすれたり秋の暮
かなしさや釣の糸吹くあきの風
うづみ火や終には煮る鍋のもの
古池に草履沈みてみぞれ哉