<文庫版>
「蔵六の奇病」「かわいい少女」「鶴が翔んだ日」「赤い実のなる踏み切り」「山鬼ごんごろ」「百貫目」の全6編を収録。昔話風の叙情怪奇作品ばかりを集めた、統一感のある内容です。
表題作「蔵六の奇病」はもちろんですが、「山鬼ごんごろ」も人間の残酷さをえぐり出した傑作です。狡猾な人間どもに翻弄されるごんごろがあまりにも可哀そうで、読んでて辛くなります。「赤い実のなる踏み切り」は、1ページ1コマで下段にナレーションが入り進行する、絵本のような詩情ある作品。「かわいい少女」は話はなんてことないけど、オチが可愛らしくて好きです。
<青林堂版・A5版>
1番最初にひばり書房から出版された「蔵六の奇病」の復刻版にあたります。収録内容は、「蔵六の奇病」「はつかねずみ」「水の中」「百貫目」の全4編。どれも素晴らしい作品ばかりです。00年に青林堂から出た復刻シリーズは「蔵六の奇病」「地獄変」「赤い蛇」の計3冊で、この「蔵六の奇病」のみハードカバー仕様です。
「水の中」は、交通事故で見るも無残な姿に変わり果てた少年と彼の母親との、耽美に満ちた恐怖幻想譚です。「百貫目」は、飢えと憎悪のはびこる乱世を、野盗に親を殺された10人兄弟が力を合わせて生き抜く物語です。“百貫目”とは怪物級に巨大な長男の事です。ラストは自己犠牲と、究極の絆の形を描いたものです。
<ジャンプスーパーコミックス版・A5版>
「蔵六の奇病」「白い世界」「百貫目」「山鬼ごんごろ」「かわいい少女」「おーいナマズくん」「人魚」の全7編を収録。名作・秀作の揃った、優れたオムニバスです。
「白い世界」は主人公の幼い少女が不憫で涙を誘う物語ですが、ラストは日野流の優しさのある安らかなもので、一縷の救いがあります。雪国の風景が美しい。文庫版収録「鶴が翔んだ日」は、これと同じ系統の作品です。「人魚」は鯉に目がない城主が、部下の陣内に人魚の探索を命じる物語です。捕えた人魚を桶に入れて帰還した陣内が、旅の終わりに見たものとは…?「おーいナマズくん」は、気持ちが暖かくなるほのぼのとした作品です。
*3バージョン、どれも☆は5つです。