「改革、改革」と喧しい世の中だが、本書の著者2人が深くかかわる大学もまた「改革」の気運にのみ込まれている。そして「大学改革」について語るとき、必ず出てくるのが大学生の学力低下。「大学生の基礎的な学力が低下しているからどうにかしなければならない…」。マスコミをはじめ、いたるところでよく聞く話である。
だが、著者はこのような趨勢(すうせい)に疑義を呈す。「改革」を声高に叫んだところで、果たして何かが変わるのかと。これはむしろ「改革」を放棄していることのあらわれではないのかと。そもそも「学力低下があるのかないのか」という問題設定が間違えているという。大衆化の進んだ社会では、たとえば数学の平均点が下がるのは当たり前である。しかしだからといって、今後天才的な数学者が現れないかといえば、決してそんなことはない。
何に対してもわかりやすい「問題」と表面的な「答え」ばかりを求める現代社会の虚構を指摘する、蓮実節・養老節全開の、諧謔(かいぎゃく)と皮肉に満ちた刺激的な1冊である。 (深澤晴彦)
登録情報
|
最近は学力低下を問題視する論調やそれにまつわる本が多く出版されて
いますが、この本は洞察力の鋭さと言う点で、他と一線を画しています。
蓮實重彦の文章は読みにくいという定評がありますが、本書は口語で
書かれているため非常に読みやすい。改めて蓮實の視点の鋭さをしり、
読みにくい文章にも挑戦してみようかという気になります。
養老はちょっと影が薄かった。
|
|