数々の名作がある清張としては駄作の部類です。イタズラに長く、登場人物が多く、キャラクターの描き分けが不十分で、トリックというほどのものもなく、一言でいうと深みのない作品です。登場人物が押し並べて「ひ弱」。会話も不必要に長く陳腐。
週刊誌に連載されていたということなので、大体の構想をつくっておいて書き進めながら作っていったような感じで、練りに練ったという感じはしません。
芸術や学術の分野での贋作、盗用、代作というのは清張のお得意のテーマでもありますが、今回はその中身に踏み込んではいないので、単なる筋立ての道具という扱いに留まっています。
もう少しコンパクトにして、筋もシンプルにして、人物の個性を押し出して、社会性を加えれば面白くなったと思います。当時としてはこれでも十分感動できたのでしょうが、現代の目で見るとTVのサスペンスドラマと変わるところがありません。
随分なことを描いていますが、私は清張の愛読者なのです。