ある程度の経験を積んだ鉄道ファンにとって広田尚敬氏は「神様」みたいな存在。広田氏の素晴らしいところは「SLブーム」の昭和40年代にあっても蒸気機関車に限定せず幅広く「鉄道」を捉え続けた点。そして何よりも現状に妥協せず、常に新しいものに挑戦続ける姿勢だろう。最近の一連のデジタル作品には孤高の凄みさえ感じられる。
とはいえ、広田氏の名を高めたものは、やはり一連の蒸気機関車の写真だろう。この写真集はその集大成といえるもの。多くは他の写真集に掲載済みのものだが、細部まで気を配った印刷、何よりも版の大きさも伴って、非常にクリアなものになっている。銀塩が時間の経過とともに退色してしまう前にこういう形で写真集として世に出ることは大きな価値があると思う。
価格もそれなりだが、今後これ以上の蒸気機関車写真集が出版されることもないだろう。