権力の甘美を追い求めつつ常に暗殺の恐怖とも戦わなければならない――
政治家とはそういうものである、というところから、このタイトルになったようだ。
作品紹介にある通り、29人の古今東西(主に現代だが)の政治家が登場する。
彼らの「生き様」をルポする渾身の一冊、ということだろうが、
出版社の「惹句」だとしても、この本を「ルポルタージュ」と言えるかどうか。
確かに手嶋氏ならではの視点もあるし、ところどころ発見もある。
しかし「人物ルポ」とは、もっと禁欲的なほど淡々とあるいは泥臭く、「人間」に切り込んでいかなければならないと思う。
本書は、著者の政治エッセイと言ったほうが適当ではないだろうか。
おそらく、「お堅い政治本ではありません」ということで、このタイトルになったと思う。
造本も贅沢だ。
だが、気取った(と私には思える)文体(特に書き出し)で始まる割には、
中身はごくありきたりだったり、逆に政治に詳しくない人にはわからなかったり……
と非常に中途半端である。だから「エッセイ」なのだ。
うっすらと色づきはじめた欅の木立の向こうにたつ煉瓦造りの建物から風に乗ってさんざめきが聞こえてきた。
これが本書の第一行目である。これをどう受け取るかは読者の好み次第だと思うが、
優れたルポルタージュ、ノンフィクションの出だしに比べ、あまりに気取りすぎではないだろうか。
それでも「名文」ならいいが、そうと言えるだろうか。
現に佐野眞一や後藤正治などは、素っ気ないほどの情景描写から始めることが多い。
本書も、ごく普通に29人の政治家を淡々と、しかし著者独自の視点で書けばよかったと思う。
手嶋氏には、それだけの情報量も力量もあるはずだ。
もちろんこういう本に仕上げたのは出版社、編集者の意図かもしれないが、
だとすれば勇み足だろう。