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葛橋 (角川文庫)
 
 

葛橋 (角川文庫) [文庫]

坂東 真砂子
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

もっともっと硬くなるのよ。硬く、熱く。直木賞作家が放つ、傑作中編小説集。

それほど俺を憎んでいたのか…。男と女の心に潜む官能と亀裂が、深い闇から浮かび上がる。郷愁ゆたかな土俗的風景を舞台に繰り広げられる、傑作中編小説集。

内容(「BOOK」データベースより)

東京で、証券会社に勤務する青年・竜介。多忙を極める仕事と、半年前に妻を交通事故でなくした心の傷から逃れるがごとく、郷里、高知の寒村に帰省した。そこで後家の篤子と再会し、次第に心惹かれて行く。向こう岸の山の斜面に建つその家を訪ねるには葛橋を渡らねばならない。古事記の伝説に基づき、黄泉の国とこの世をつなぐといわれる葛。その葛で編まれた吊り橋が竜介にもたらしたものは…。男と女の心に潜む亀裂と官能が、深い闇から浮かび上がる表題作を含む、傑作中編小説集。

登録情報

  • 文庫: 253ページ
  • 出版社: 角川書店 (2001/01)
  • ISBN-10: 404193205X
  • ISBN-13: 978-4041932056
  • 発売日: 2001/01
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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By Jabb
形式:文庫
中編3篇からなる小説集です。収録作品は<一本樒>、<恵比須>、そして表題の<葛橋>。<葛橋>も良いのだけれど、<一本樒>も光る魅力。

<一本樒>

良人に忠実に、真面目に生きてきた人妻・志野に訪れる転機を描きます。DVを振るう夫から逃れてきた実の妹を庇い、匿うことから生まれる悲劇。

私は、忠義が踏みにじられるのを見ると、悔しくてやるせなくて仕方ありません。志野の運命に呆気に取られつつ、この運命をもたらした人間たちへの因果を願わずにはいられません。

物語の運びで堪らない、スゴイ!と思うのは、彼らの破滅カウントダウンが、着実に行われていることです。登場人物たちの特性や<樒>を随所で効果的に絡ませながら、最後の仕上げに向かわせるこの構成・・。良く練られていると感激します。

<葛橋>

古事記によると、黄泉の国とこの世をつなぐのが“葛”。その葛で編まれた吊り橋の「あちら」と「こちら」の危うい交わりを描いた中編。夢とも現ともつかぬ世界が展開され、気持ちよく酔える小説です。

実際には、怪奇現象だとか錯覚と思われる描写なのだけれど、それらは妖しの魅力があって、坂東氏の世界に入り込んでしまう。

葛の向こうの「あちら」の世界に魅了されてしまう男の、焦燥感が伝わってきます。「あちら」には、何らかの救いがあるかもしれない、現状を変えられる何かがあるかもしれないと、期待するのは分かる気がします。

それにしては、篤子の人格に厚みがないかな。「あちら」と「こちら」の橋渡し役にしては、ちょっと薄い気がします。
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By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:文庫
作者は男女の愛と官能を妖しい"場"の中で描くことに定評がある。収録作は以下の通り。「一本樒」、「恵比寿」、「葛橋」。

「一本樒」ではヒロインがふとしたキッカケから夫と妹が浮気していることに気付く。更に、彼らはヒロインを殺そうと企てるのだ。それに感づいたヒロインが取る行動とは...。浮気に気付くキッカケともなった樒の翳に象徴されるヒロインの愛と怨念を描いて、恐怖さえ感じさせる秀作。

「恵比寿」は田舎の主婦が海岸で鯨のフンを拾ったことから物語が始まる。その地方では、鯨のフンは「福の神」を呼ぶとされ、それ自身価値あるもの(龍涎香)として珍重される。主婦は一攫千金を夢見て、フンを高知市の骨董商に鑑定してもらうのだが、結果は全くの期待外れ。主婦はトボトボと家に帰るのだが...。ここまでは単なる喜劇談かと思わせるが、最後の描写で一転話は奇縁談に。ツイストが鮮やかな一作。

「葛橋」は葛が黄泉の国とこの世をつなぐといわれる古事記の伝説に基づいて書かれたもの。現世に生きる男が「葛橋」の向こう側に住む女の情念に引き込まれ橋を渡ってしまい、快感と恐怖に見舞われながらも正気を取り戻し、必死に「葛橋」のこちら側(=現世)に戻ろうとするが、葛に絡まれ橋から落ちてしまう...。伝説と女の情念がうまく融合した傑作。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 中篇小説3篇からなりますが、うち2篇は主婦を主人公に設定しています。長編の「蟲」を思い起こします。

 「一本樒」は、のどかな大和の里を舞台にした、平凡な専業主婦が殺人事件に巻き込まれるサスペンスで、「桜雨」を思わせるような結末となっています。「恵比寿」は、単調な日常からの脱却を夢見た漁師の妻を主人公にして、一攫千金の夢の顛末を綴っています。
 この2作の主人公は、ごく平凡な「主婦」になってしまった自分の人生を何とか肯定しようとするが、どうしてもしきれないところに共通点があるように思います。そしてそれぞれ、妹の元夫と漂流物という外からの刺激に遭遇して心を動かされ、人生をかき乱されるという構図です。
 およそ「平凡な主婦」とは対極的な人生を送っていると思われる坂東さんをして、このように細かな心理描写を可能ならしめているものは何だろうと考えると、やはり天賦の才としか言いようがありません。

 「葛橋」の主人公は証券会社の営業職の男性で、無機質な都会と停滞する田舎の狭間で心が揺れ動くという、坂東作品ではよく登場するキャラクターです。上記2篇の「平凡な主婦」のパートナーとも言えるでしょう。
 葛橋にまつわる伝承が織り込まれ、エロスだけではない、幻想的な作品に仕上がっています。迷う心につけ込まれて破滅しないようにという、教訓的な作品のようにも思われます。
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