本書は、『葉隠』を座右の書とする三島が、抜粋した名句からエッセンスを抜き出し、中核をなす「死の哲学」に解釈を加えたもので、『葉隠』の魅力と三島の思想が凝縮された1冊になっている。
武士といえども藩の組織人であり、彼らに説かれた処世訓は今の企業人にそのままあてはまるものが多い。トップの決断の仕方、上司や部下をうまく操る方法、立身出世の条件、リストラの仕方、仕事の優先順位の決め方などは大いに参考になるはずだ。また三島による「準備と決断」や「精神集中」などのエッセンスは、このノウハウが小手先から出たものではなく、並々ならぬ覚悟から生まれていることを教えてくれる。ほかに恋愛論や子どもの教育論などもあり、生活全般におけるユニークな視点を見つけることができる。
三島は『葉隠』を、死を覚悟することで生の力が得られる逆説的な哲学としてとらえている。「死という劇薬」が生に自由や情熱、行動をもたらすとし、それらが失われている現代の生に疑問を投げかけている。本書が書かれたのは三島が自決する3年前の昭和42(1967)年。三島を「行動」に駆り立てた思想の一端に触れることができるだろう。(棚上 勉)
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47 人中、43人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
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レビュー対象商品: 葉隠入門 (新潮文庫) (文庫)
常朝の「葉隠」は陰鬱な書では決してない。それとは反対に、非常に明るい本と言える。あくびを止める方法だとか、人にアドバイスするタイミングや方法など人生を楽しく生きる方法を書いているとすら感じられるくだりも多い。三島が葉隠れをどのように受け取ったかは、私には想像できないが、三島の解説は面白い。読み易いし、訳も屈託がなく気持ちが良い。 インテリや男女についてなど、非常に痛快なところも多く、繰り返し読める。
36 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
★素晴らしく実用的な本,
By 日本を守り隊 "セブンアンドワイ" (滋賀県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 葉隠入門 (新潮文庫) (文庫)
「武士道というは死ぬことと見つけたり」という一節が非常に有名なので、ともすると葉隠には精神論一辺倒のファナティックで現実離れしたことが書かれているように思われがちです。 しかし、そのような先入観は実際に「葉隠」を読めば見事に覆されます。 当時の武士たちも生まれつき強靭な精神力や、死を前にして臆することのない勇敢さを備えていたわけではなく 日常生活を過ごす上での細かな気配りや日頃の言葉使い等を制御することよって、いざという時に死ねる覚悟を築いていったことが「葉隠」を読めば分かります。 読む人によって様々な解釈があるかもしれませんが、「葉隠」は無闇矢鱈に死ぬことを奨めているものではありません。 「死ぬ覚悟をもって事に臨むことの大切さ」と「どうすれば死ぬ覚悟を固められるのか」に関して非常に論理的に解説しているのが「葉隠」だと思います。 「葉隠」には現代人が生きていくうえで非常に参考になる素晴らしく実用的な知恵が溢れています。 「私(わたくし)に基づいて考えている限り、知の働きは邪なものになってしまい、本当の知恵は湧いてこない、 公(世のため人のため・主君・国家のため)に思いを馳せ、知恵を絞ったときこそ人間の知性は大いなる力を発揮する」 という意味のことが「葉隠」には書かれていますが 潜在意識・潜在能力に関する世界でも有数の理論家である故ジョセフ・マーフィー博士の教えと完全に重なると思います。 一人でも多くの日本国民の皆様方が本書を御読みになられるよう願います。
38 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
心構えを説く本,
By コンチータ (大阪府門前仲町, Japan) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 葉隠入門 (新潮文庫) (文庫)
葉隠入門は20年以上前に書かれた本でありながらも、「芸は身を滅ぼす」、「名誉と富に執着すること」など、古くからの常識的な教えとは逆の発想が含まれており、新鮮で面白い。「ファッションだけの若者」、「男性の女性化」、「危機感のなさ」などは戦後の(特に最近の、)日本人の特徴であるかのように言われているが、歴史をみてみると、太平の世にはいつでもそのような風潮があったようである。葉隠は江戸元禄文化の時代に、葉隠れ入門は昭和の成長期末に、長い平和のなかで退屈し道を失った社会、特に若者達に向けて書かれたようだ。 本書全体を通しては、処世術、心構え、人生論、道徳などを広く浅くお手軽にまとめ上げた感がある。が、死のイメージと直結した心構えの持ち方や道の考え方にはインパクトがある。現代に生きる我々には、乱世の武士や戦時の軍人兵隊ほど死に直面し死について考える機会がないが、それでも自分の死を念頭に置いて自分の人生を考えてみると、「もっとしっかり生きてやる」という気合というか何かよくわからない気持ちがこみ上げてくる。 死は力にもなるのである。
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