TBS主催の伝統あるホール落語会、落語研究会で吉朝が1993年から2003年まで演じた14高座を収録したDVD7枚組。吉朝は38才から49才まで。
かなり若い頃の映像も収録されているので、吉朝の芸という点では、完璧とは言えないものもあるのは確かだと思う。しかし、檜舞台での、密度の高い10年間の高座には胸が躍る。
このDVD全集を見る上で、会場が東京であることは一応念頭に置く必要がある。東京の観客は、吉朝を好意的に迎えているから、「アウェー」ということはないが、少なくとも上方落語としては「ホーム」ではない。吉朝自身もある程度、東京のお客さん向けの演じ方をしていると思う(決して、媚びているということではないが)。
しかし、目と耳の肥えた観客のレベルの高さと、その客を魅了する吉朝の芸の力によって、その高座が極上の空間だったことが、DVDを見る者にも伝わってくる。
「どうらんの幸助」で、浄瑠璃のお師匠さんがお手本を見せる場面、吉朝の浄瑠璃語りに会場から拍手が鳴る。「蛸芝居」の所作の鮮やかさに客席が感嘆している息遣いも聞こえるようだ。「不動坊」で、雪の降る屋根の上の騒動に、客席が惹きつけられている雰囲気もよくわかる。ここは「物哀しさ」も漂うところであり、笑わせるだけでいい場面ではない。
疑問点は、収録順が編者の自己満足に過ぎず、意味不明であること。なぜ単純に年代順にしないのか。そうすれば、吉朝の充実ぶりを、順々に楽しめるのに。
もう一つ、画面が4:3に統一されていること。少なくとも、2000年頃以降の高座は、16:9のワイド画面で記録されているはず(追悼番組で放映された「ふぐ鍋」「不動坊」「蛸芝居」は16:9だった)。古い時代の映像に合わせたのだろうが、別に画面サイズは混在しても構わないはずで、オリジナルの映像を大事にしてほしかった。