さあさあ、寄ってらっしゃい、読んで下さいまし、にわか落語ファンのお兄さん、お姉さん。『落語娘』の紹介だい! 主人公の香須美は、修行中の前座。彼女は幼い頃、死別した叔父との約束を果たすべく落語家を志した。学生時代は、素人向けの落語コンクールの賞を総ナメした腕前だったが、人生至るところに不幸ありに、マジで気づかされる。第一志望の噺家からはすげなく断られる。
たまたま居合わせた三々亭平佐に入門したことが、香須美の苦労の始まりだ。平佐は超がつくドスケベで女遊びも半端ではない。まだ前座の香須美からも、金を巻き上げての道楽三昧。あげくに、テレビ番組で共演した総理大臣候補の代議士に、なんとオンエア中に、コキ降ろす無礼を働き、無期限謹慎中とあいなった。楽屋でも肩身が狭く、香須美は五代目古今亭志ん生の『びんぼう自慢』にも負けぬ、『師匠苦労自慢』という本が書けるじゃないかと、あっしは思ってしまいました。
かつては落語界の重鎮で“新作の平佐”との異名をとった男だが、人間、堕ちる時はとことんですな。まるで“死神”に取りつかれたみたいだ。いや、それが死神よりもイヤらしいテレビ局のヤリ手プロデューサーに狙われたのだ。のどかち手どころか、チンコが出るくらいに欲しい大金をチラつかされたら、生命なんざいらねえと来たもんだ。なんとなんと、作者や演者の怪死が相次いだ禁断の怪談『緋扇長屋』を、実況ライブ放送するプロジエクトが立ち上がってしまったのだ。このプロデューサーの悪徳は、心配する弟子の香須美まで、視聴率の食い物にしようと企むのだ。悪霊よりも一枚も二枚も上手だね〜。
物語は、ここからがおもしろい! 御用とお急ぎのない御仁は買って読むなり、映画館へ行くなりしてくだせい。おっと、ちょいと言い忘れた! この作品は、なかなか落語界の実像を比喩しておりますな。前座を取り巻くいじめ社会。時の総理大臣を「佐藤栄作の正体」という新作落語にしてデレビで放映したら、逆鱗にふれ弾圧された五代目柳家つばめを思い出しました。落語界の若きリーダーの三松家柿紅なんざ、その憎たらしさ、傲慢さが春風亭小朝にそっくりなんて言っちゃったりして・・・・・・。シャレですよ! シャレ!!
主役を演じたミムラは、柳家喬太郎に稽古を1か月半もつけてもらっただけあって、御立派な演技でした。三々亭平佐役の津川雅彦さんは、さすが名優だけあって、『タイガー&ドラゴン』の西田敏行より、扇一本下三寸の芸の腕前も絶品でござんす。最後に落語の『夢の酒』や『夢金』、あるいは、『鼠穴』や『芝浜』を聴いてから、本書を読むとエンディングの醍醐味が堪能できるってもんですぜ!!