面白かった。
著者は円熟期の三遊亭圓生に人情噺のスタジオ録音企画を持ち込み、
その余勢を駆って『圓生百席』へと発展・成功させたCBSソニー(当時)の
名プロデューサー。『円生の録音室』という著書もある。
圓生との出会いとその後、志ん朝、小三治まで口説いていく後半部分は確かにクライマックスだが、
前半部分、神田に生まれて落語好きの父の影響で小学生時代から寄席通い、さらにホール落語通いへと
深化していく落語好きの青少年時代の話も秀逸。
金馬・文楽・志ん生といった、圓生に先行して大看板になった名人たちの芸風への、
一般的評価とやや異なる視点も、説得力がある。
伴走者の自慢になりがちな郷愁譚でなく、ストイックな経験談の中から、時代の空気も伝わり、
まことに興趣にあふれる1冊だ。