昨今の落語ブームということもあり、噺家自身が書いた入門書、案内書というような本が増えた。しかし、その中には、本人の名を使ってゴーストライターか取り巻きのスタッフが書いたのでは?と思わざるを得ない駄作も多い。過去には噺家の書いた名作も数多くあるが、その大半は半生記的なものか、エッセイである。そんな中で、噺家と寄席の起源をしっかり紐解き、幕末以降の江戸落語と上方落語の経緯を、自ら集めた資料・蔵書、そして諸先輩方の証言などから読み応えある内容で構成している本書は、異色と言える出来栄えだ。文章に衒いがなく、また「です。ます。調」での丁寧なリズムは、文我師匠の高座を聴いているような心地よさもある。惜しむらくはタイトルだ。正直なネーミングではあるが、「売り」を狙いすぎた感あり。すでに四代目として知る人ぞ知る噺家なのだから「文我の落語入門」などでも十分だったのではないだろうか。タイトルのみ減点とした。